書面の監査業務「25→12時間」に半減 生成AI、旭化成の活用策は?:生成AI 動き始めた企業たち(2/3 ページ)
連載「生成AI 動き始めた企業たち」第18回は、旭化成の取り組みを紹介する。各事業分野に特化した独自のAIモデルの構築を目指すという同社。どのような価値観のもと、生成AI活用を進めているのか。
Q. 自社のAI技術の強みは何か
当社では、マテリアルズ・インフォマティクスなどの領域で早くから人材育成を進めており、IT技術により業務を改革できる人材が育っています。また、全社員を対象とした人材育成プログラム「旭化成DX オープンバッジ」を実施しており、現場から経営層までDXに対する意識が高く、迅速に課題解決に取り組むことができるのが強みです。
旭化成グループ全体のDX推進をミッションとする組織「デジタル共創本部」では、事業部や事業会社の業務担当者と連携して、個々の業務に特化したシステムの開発を進めています。
例えば、住宅事業では、顧客への提案を生成AIによって支援することで、人による品質のばらつきを低減し受注率を高めることを目的とした検証を実施しています。この活動の中で、現場の実務担当者による評価の結果、生成AIで作った文言が、熟練者レベルには達しないものの素案として利用するには十分な品質であるということが分かりました。
エンジニアリング部門では、社内の規定ルールやこれまでに蓄積された膨大な社内技術情報を格納したデータベースと生成AIを連携させることによって、過去の知見の活用による人材育成や技能伝承の加速を目指しています。さらに、安全活動の場面において危険予知の抜け漏れを他のシステムと連携して指摘するシステムの開発も視野に入れています。この活動の中では、現場の経験者でも気が付かなかった発見が得られた事例も確認できています。
Q. 自社の競争優位性をどう確保するか
短期的な戦略としては、生成AIの利用目的を「個人利用」と「組織利用」の2つに分け、それぞれに対して推進施策を実施します。個人利用については、社員一人一人が生成AIを業務支援ツールとして使いこなすための教育や相談窓口を充実させていきます。
組織で利用するシステムに生成AIを導入する「組織利用」では、社内の文書データベースと生成AIを連携させるための共通基盤を構築して提供します。具体的なPoC(Proof of Concept、概念実証)の実施にあたっては、生成AIとの親和性や実現性などを明確にした上で、現場の課題解決に向けた取り組みを個別にデジタル共創本部の生成AI活用推進メンバーがサポートします。
これらの施策を加速させるために、当社は生成AIシステムの独自開発にこだわらず、Microsoft社のAzure OpenAI ServiseやCopilotなどの他社製品を積極的に導入していきます。同時に、既存のサービスでカバーできない部分に注力して、自社独自の技術や高度なノウハウの獲得を進めます。
生成AIをめぐる技術やサービスの開発は国内外で急速に発展しているため、積極的に外部の技術を取り込むことが結果的に競争優位の源泉になると考えています。
一方で、長期的な戦略として、材料化学や住宅、医療など当社の事業分野に特化した独自のAIモデルの構築を進めていく計画があります。旭化成の保有する知識やノウハウをLLM(大規模言語モデル)に取り入れることによって競争力の高い技術の構築を目指します。
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