「Claude 3」は本当に「ChatGPT」より優れているのか? 使い込んで分かった強みと弱み:その悩み、生成AIが解決【番外編】(2/3 ページ)
いま話題を集めているチャット型生成AIサービスの「Claude 3」。ChatGPTを超える精度を持つともいわれるが、果たしてどの程度の実力なのだろうか。さまざまな用途で実際に使い比べてみた結果、その強みと弱みが見えてきた。
構成の巧みさはChatGPTに軍配が上がる
では「今すぐChatGPTからClaude 3に乗り換えるべき」と言い切れるかといえば、そうとは限らない。文章そのものではなく、そこに盛り込まれている内容や構成に着目すると、ChatGPTのほうが優れているケースも少なくない。
例えば、先述の謝罪メールでは、Claude 3で生成された文面の内容が謝罪だけでまとめられているのに対して、ChatGPTは「再発防止策」まで記載されていた。相手の受け取り方にもよるが、後者のほうが誠実な印象を与えることができそうだ。
また、既存のデータを整理してまとめる作業についてもChatGPTのほうが優れた出力結果を得られることが多い。具体的には、会議の文字起こしを議事録にまとめたりプレゼン資料を作成したりといった用途が挙げられる。
ここでは「以下は商品開発についての会議の文字起こしデータです。この会議で議論された企画の実現について社内で承認を得るための説得力のあるプレゼンテーションを作成したいと考えています。各スライドの見出しおよびテキストの案を出力してください」という指示とともに、会議音声の文字起こしデータを模してAIで生成した5500字ほどのテキストを貼り、スライド資料の原案を生成した。
■ChatGPT(GPT-4)
スライド 1: プロジェクトの紹介
- 見出し: 若手ビジネスパーソン向けの革新的手帳開発
- テキスト: 当社は、若手ビジネスパーソンのニーズに応えるために、新しいタイプの手帳を開発します。デジタルとアナログのベストな組み合わせを追求し、彼らのライフスタイルを支援する製品を作り出します。
スライド 2: 市場と課題
- 見出し: 若手ビジネスパーソンの課題
- テキスト: デジタルネイティブな若年層にとって紙の手帳は古く感じられる可能性があります。しかし、触感や直感的な使い心地といった紙の手帳の利点をどう活かし、デジタルと融合させるかがキーポイントです。
スライド 3: 解決策と特徴
- 見出し: 革新的な手帳の特徴
- テキスト: 書き消し可能なペン、デジタル連携機能、カスタマイズ性の高いデザインを特徴とする新しい手帳。これにより、柔軟性と実用性を両立し、若手ビジネスパーソンの多様なニーズに応えます。
スライド 4: 製品設計
- 見出し: ユーザーカスタマイズの可能性
- テキスト: マルチレイヤー構造と交換可能なカバーを採用。内部ページは目標設定、進捗追跡、ライフスタイル支援のセクションを含め、高度にカスタマイズ可能です。
スライド 5: サイズと形状
- 見出し: 手帳のサイズと形状
- テキスト: A5サイズで十分な書き込みスペースを提供しつつ、バッグにも収まる便利なサイズ。角の丸いデザインで耐久性と携帯性を向上。
スライド 6: 環境への配慮
- 見出し: エコフレンドリーな素材の使用
- テキスト: 持続可能性と環境への配慮を重視し、エコフレンドリーな素材を使用。環境意識の高い若手ビジネスパーソンにアピールします。
スライド 7: デジタル連携
- 見出し: デジタルとのスムーズな連携
- テキスト: QRコードやアプリ同期を通じて、紙の手帳の内容をデジタルに転送。情報管理の効率を大幅に向上させます。
スライド 8: マーケティング戦略
- 見出し: 若手ビジネスパーソンへのアプローチ
- テキスト: ソーシャルメディアを中心にオンラインマーケティングを強化。コラボレーションやイベントを通じて、実体験を提供し、製品の魅力を伝えます。
スライド 9: 予算計画
- 見出し: 予算と投資の計画
- テキスト: 製造、流通、マーケティング、研究開発に予算を分配。効率とコストのバランスを取りながら、品質とブランドイメージを維持します。
スライド 10: まとめと次のステップ
- 見出し: プロジェクトのまとめと展望
- テキスト: 革新的な手帳は若手ビジネスパーソンのニーズに合わせて設計されています。今後のフェーズでは、ユーザーフィードバックを積極的に取り入れ、製品をさらに洗練させていく予定です。
ChatGPTの出力では、プロジェクトの紹介から始まり、「課題」を提示してそれに対する「解決」として企画である手帳を提案、その後具体的な仕様などを紹介するという流れをとっている。情報がきれいに整理されているので、なぜこの商品の開発が必要なのかも理解しやすく説得力がある。
同じプロンプトでClaude 3を使って出力された場合はどうだろうか。
■Claude 3 Opus
スライド1: 見出し: 若手ビジネスパーソン向け手帳の開発
- 紙の手帳は古臭く非効率的に見えるかもしれないが、デジタルにはない「触感」や「直感的な使い心地」を提供できる
- 修正の難しさやデジタルとの連携などの課題を克服する必要あり
スライド2: 見出し: 若手ビジネスパーソンのニーズ
- 時間管理に加え、自己啓発やキャリア開発にも関心が高い
- プライベートな目標や趣味、健康管理など、ライフスタイル全体をサポートすることが重要
- 持続可能性や社会貢献にも価値を置く世代
スライド3: 見出し: 手帳に必要な要素
- 高度なカスタマイズ性。異なるタイプのページを自由に追加・交換できるシステム
- デジタル連携。紙の手帳の情報をスムーズにデジタルデータとして扱える機能
- エコフレンドリーな素材の使用。コストとのバランスを考慮
スライド4: 見出し: デザインとカスタマイズ性
- ベースはミニマリストデザイン。プロフェッショナルな印象を与え、ビジネスシーンでも使いやすい
- カスタマイズ可能なカバーシステムを導入。ユーザーがシーンに合わせて使い分けられる
- 内部ページのデザインにもバリエーションを持たせ、必要に応じて追加購入可能に
スライド5: 見出し: プロトタイプの仕様
- サイズ: A5。ポータブルでありながら十分な書き込みスペースを確保
- 形状: 角が丸いデザイン。バッグの中での扱いやすさと耐久性を向上
- カスタマイズ可能なカバーと内部ページ
- QRコードを使用したデジタル連携機能
スライド6: 見出し: 製造とコスト
- 内部ページのテンプレートは標準化し、特別なデザインはオンデマンドで提供。在庫リスクを最小化
- カバーの交換システムは、シンプルでコスト効率の良いメカニズムを採用
- デジタル連携機能の開発・メンテナンスコストを考慮し、過度なコスト増を避ける
スライド7: 見出し: マーケティング戦略
- オンラインマーケティングを重視。ソーシャルメディアを活用したキャンペーンを展開
- 人気ブランドやデザイナー、アーティストとのコラボレーションで注目を集める
- ポップアップストアでの手帳カスタマイズ体験や、ワークショップ・セミナーを開催
スライド8: 見出し: マーケティングメッセージ
- カスタマイズ性とデジタル連携機能の独自性を強調し、若手ビジネスパーソンの共感を得る
- 持続可能性やエコフレンドリーな素材の使用など、環境への配慮をアピール
- ユーザーレビューや体験談を積極的に活用し、信頼性とリアリティを高める
スライド9: 見出し: 予算配分
- 製造: 30% - 品質を保ちつつ、材料選定や生産プロセスの最適化によりコストを削減
- 流通: 20% - オンラインとオフラインの両方を活用。ポップアップストアなどに投資
- マーケティング: 30% - ソーシャルメディアキャンペーン、コラボレーション、イベント開催に注力
- 研究開発・リザーブ: 20% - 品質の維持と改善、新技術・デザインの研究、緊急時の備えに充当
スライド10: 見出し: まとめと今後の展望
- 若手ビジネスパーソンのニーズに合わせ、カスタマイズ性とデジタル連携を備えた手帳を開発
- ミニマリストデザインをベースに、ユーザーの好みに合わせた使い分けを可能に
- オンラインとオフラインを組み合わせたマーケティング戦略で、製品の独自性と環境への配慮をアピール
- 適切な予算配分で、品質と競争力を維持しつつ持続可能なビジネスモデルを構築
Claude 3の場合は、1枚目のスライドでいきなり紙の手帳とデジタルの比較について言及している。これは、元となった会議の序盤でそのような議論が行われているためだが、聞き手にとってはやや唐突に感じるかもしれない。全体的に「会議の内容をそのまま書き写した」という感じが強く、主旨は分かるものの説得力にはやや欠ける印象だ
会議などの場合、一つ一つの話題がきっちり順番に話されるとは限らない。途中で前の話題に戻ったり、別の話題に飛んだりすることもよくある。人の手でその内容をまとめる場合、順番を入れ替えたり同じトピックを1項目にまとめたりするなどの編集を加えることが多いだろう。ChatGPTは、その作業までしっかり行ってくれる。
このほかに、ページ数の多いPDFの資料をアップロードして「この資料の内容を元に、職場で使えるマニュアルをA4用紙2ページ分程度のボリュームで作成してください」といった指示を与えて新たな資料を作る場合なども、ChatGPTのほうが情報が整理された分かりやすい出力結果を得られる。
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