2015年7月27日以前の記事
検索
連載

「Claude 3」は本当に「ChatGPT」より優れているのか? 使い込んで分かった強みと弱みその悩み、生成AIが解決【番外編】(1/3 ページ)

いま話題を集めているチャット型生成AIサービスの「Claude 3」。ChatGPTを超える精度を持つともいわれるが、果たしてどの程度の実力なのだろうか。さまざまな用途で実際に使い比べてみた結果、その強みと弱みが見えてきた。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

連載:その悩み、生成AIが解決

アイデアが浮かばない、こんな無駄な作業なくしたい――。ビジネスパーソンを悩ませる日々のさまざまな困りごと、ChatGPTに聞いてみませんか? ITジャーナリストの酒井麻里子氏がプロンプトの書き方を伝授する。

 いま話題を集めているチャット型生成AIサービスの「Claude 3」。ChatGPTを超える精度を持つともいわれるが、果たしてどの程度の実力なのだろうか。さまざまな用途で実際に使い比べてみた結果、その強みと弱みが見えてきた。

 Claudeは、米国のAIスタートアップのAnthropic(アンソロピック)が手がけるモデルおよび生成AIサービス。3月に発表された最新モデルのClaude 3は、高精度な最上位モデルの「Opus」、汎用向けの「Sonnet」、応答速度の速い「Haiku」の3種類が展開されている。同社が公開したデータによると、Claude 3 Opusでは、大学レベルの専門知識や数学、コーディングなど多くの分野の指標でGPT-4を超えたとされている。


ChatGPTとClaude 3。見えてきた双方の強みと弱みは? 写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:酒井麻里子(さかい・まりこ)

ITジャーナリスト/ライター。生成AIやXR、メタバースなどの新しいテクノロジーを中心に取材。その他、技術解説やスマホ・ガジェットなどのレビューも。著書に『趣味のChatGPT』(理工図書)、『先読み!IT×ビジネス講座ChatGPT』(共著・インプレス)など。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。株式会社ウレルブン代表。XRと最新テクノロジーのWEBマガジン「TechComm-R」運営。


卓越した日本語力が魅力のClaude 3

 日本人ユーザーにとって驚きが大きいのは、Claude 3の日本語力の高さだ。SNSなどでもその能力の高さを賞賛する声は多く、「ChatGPTより使える!」との意見も目にする。

 筆者もさまざまな用途で出力を行っているが、確かに生成される日本語の高さは群を抜いている。例えば、本連載で扱った「社員の不手際について謝罪するメールのサンプル」を、ChatGPT(GPT-4)とClaude 3 Opusで出力してみると、日本語力の差は一目瞭然だ。

ChatGPT(GPT-4)

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。

この度は、[日付]にお約束しておりました商談の日程に、弊社の若手社員が大変な非礼を働き、ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。担当社員は日程を誤認し、さらに先方様からのご連絡にも迅速に対応できず、不適切な方法での謝罪の試みがあったこと、心より反省しております。

貴社担当者様が商談のため特別に出社されていたにも関わらず、このような事態を引き起こし、貴重なお時間を無駄にしてしまったこと、深くお詫び申し上げます。

(中略)

何卒、この度の件に関しましては、厳しいご指摘を賜りながらも、今後も変わらぬお付き合いを賜れますよう、心よりお願い申し上げます。

敬具

 このメールでは「若手社員が取引先との商談日程を勘違いして、約束の日時に先方を訪問しなかった」「相手は普段はリモートワークで、この日は商談のために出社していた」「謝罪の方法も不適切だった」という状況に対しておわびをしている。

 ChatGPTが生成した文面では、相手にとって無駄足になってしまったことを謝罪する箇所で「商談のため特別に出社されていた」という直接すぎる表現を使っている点や、「不適切な方法での謝罪の試みがあった」などの不自然な言い回しがたびたび登場する点が気になる。「言いたいことは分かるけれど、ビジネスシーンでの大人の文章としては不十分」という印象を受ける。

 続いて、Claude 3が生成したメールもみていこう。

Claude 3 Opus

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

このたびは、弊社社員の不手際により、貴社にご多忙のところお時間を割いていただいたにもかかわらず、約束の商談に伺うことができませんでした。ご連絡の対応も不十分で、多大なるご迷惑とご心配をおかけいたしました。心よりお詫び申し上げます。

弊社といたしましても、今回の一連の対応の不備を真摯に受け止め、深く反省しております。社員の教育を徹底し、信頼回復に全力で取り組む所存です。つきましては、お詫びとご説明に伺わせていただきたく存じます。ご都合のよろしい日時をお知らせくださいますようお願い申し上げます。

今後はこのような事態を二度と起こすことのないよう、細心の注意を払ってまいります。 重ねてお詫び申し上げますとともに、引き続きご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

 Claude 3では「ご多忙のところお時間を割いていただいた」「ご連絡の対応も不十分」などの自然で洗練された言い回しが使われている。もちろんこの場合も、実際に使用するにあたって人間が内容のチェックと手直しを行うことは不可欠だが、ChatGPTが生成したものに比べるとはるかに少ない手直しで済みそうだ。

 これまで「AIが書いた妙に不自然な日本語」は仕方のないものだった。プロンプトを工夫しても改善には限界があるため、出力後に人間が手直しをするしかなかったが、Claude 3はそんな文章生成AIの「常識」を一気に覆してしまった。

 ただし、高い日本語力を持つのは、最上位モデルのOpusについての話だ。無料で利用できる「Sonnet」や「Haiku」も、ChatGPTに比べると言い回しの不自然さは少ないものの、Opusのような圧倒的な日本語力の高さを誇るという印象ではない。Claude 3を使うのであれば、迷わず有料プランに加入するのがよいだろう。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る