これからのエンジン開発、どうなる?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)
猫も杓子もEVシフトというブームも終わり、ようやくEVの地に足がついた着実な進歩が認められる時代になった感がある。そしてBEV以外のカーボンニュートラルプランが必要になってくる。そのエンジンとは一体何か?
BEVユーザーになれない残り70%の選択肢
かなり好意的に見て、母数約54%の中で半分強に当たる30%を、普及の最大値と考えている。「それは日本の場合だけ」という人も出てきそうだが、欧州の方が賃貸は多いし、地震がない分物件が古い。築100年は全く珍しくないので、後から特別に改善していない限り、電源は相応に脆弱(ぜいじゃく)だろう。
ドイツの場合、日本で言う戸建ては40%ほど。二戸ひとつながり(イギリスでいううセミデタッチドハウス)が20%。それ以上の集合住宅が20%、米国は1日当たりの走行距離が長いなど、それぞれ事情は違えど、現状のBEVは、ユーザーがストレスなく使える性能に至っていないのはほぼ同様である。
BEVの普及率が最大で30%と仮定を置くと、残る70%の人はどうなるのか。移動の自由が戸建てに住める人のみに与えられるという構造はどう考えてもよろしくない。「戸建ても持てないヤツは移動の自由など諦めろ」と正面切っていえる人もまずいまい。
となれば、BEV以外の移動の選択肢を残る70%の人々にどう提供するかを考えないわけにはいかない。まずは、世界の自動車需要を満たすのはBEVだけでは無理。他に対案があればともかく、現状ではそこを補完するのは内燃機関しかないという厳しい現実を知ることからスタートすべきである。
とはいえ70%の人がBEVは無理だから、「これまで通りの何も変わらないガソリンとディーゼルで」というわけにもいかない。そこまで極端な結論に達するには「2050年までにカーボンニュートラル達成」という世界で決めた目標そのものを取り下げるところから始めなくてはならないからだ。
今後のなりゆきでそうなる可能性はゼロではないが、今現在の世界の潮流から考えれば、目標はまだ生きている。当然70%の人に向けたBEV以外のカーボンニュートラルプランが必要になってくる。そしてそこには多少の緩さも必要だと思う。例外なしの厳しいルールは、誰も守らなくなる。
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