これからのエンジン開発、どうなる?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)
猫も杓子もEVシフトというブームも終わり、ようやくEVの地に足がついた着実な進歩が認められる時代になった感がある。そしてBEV以外のカーボンニュートラルプランが必要になってくる。そのエンジンとは一体何か?
では高級車はどうなるかといえば、100%CNFでエミッションの問題が解決すれば高出力のスポーツユニットや、大トルクの高級車用ユニットが復活できる可能性がある。マツダはジャパンモビリティショーに「MAZDA ICONIC SP」を出品し2ローターHEVスポーツの可能性のみならず、純内燃機関の2ローターまで示唆した。
ヤマハはトヨタのユニットをベースに5リッターV8の水素内燃エンジンを開発中である。写真を見ての通り、Vバンクの間に高さを気にすることなく聳(そび)え立つエグゾーストマニフォールドを見る限り、ミッドシップ専用のレイアウトになる。なので用途としてはレース用かミッドシップスポーツに限られる。普通のFRモデルに積んだらボンネットからマニフォールドが突き出してしまうし、そこから排気管をどう引き回すかが問題になる。ただしその分性能はすごい。発表値を見れば最高出力335kW(455.5ps)/6800rpm、最大トルク540Nm(55.1kgf-m)/3600rpm。
まだ深く静かに潜航している状態のユニットが多いので、一部例外とみなされがちだが、前半で説明した通り、少なくともBEVと同じくらいには普及させなくてはいけないエンジンだと考えると、内燃機関の未来はまだまだ先があることが分かるだろう。
プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
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