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生成AIでCM制作、費用4割削減 沖縄の地銀が挑んだDXの一歩とは?(2/2 ページ)

「このCMはAIを用いて作成しています」。沖縄県に拠点を置く沖縄海邦銀行が、生成AIを活用して企業CMを制作した。金融機関としては初めてだという。その狙いとは――。

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最も難しいのはプロンプトの出し方

 もちろん、放っておいても1から10までAIが映像を作ってくれるというものではない。人間が入力する「プロンプト」(指示や質問)をどう出すかが大きなポイントとなる。

 阿部さんは「当初は、沖縄のイメージを打ち出そうとしても、AI自体がまだ『沖縄イメージ』を持っていなかったので、狙っていたものとは違うものがよく出てきました。建物が京都っぽかったり、人々の顔立ちが外国人風になっていたりしていましたが、試行錯誤を重ねて完成に近づけていきました。相手は人間ではないので、どのように情報を与えていくかが重要で大変な作業でした」と話す。

 また「AIが提示してくる世界観が面白かったです。自分だけの限られた知識だけでは絶対に出てこないものでした」と、クリエイティブにおける一つの手法としての、AIが果たした役割も大きかった。

 生成AIでテレビCMを作ろうという背景には、昨今の社会的状況の変化もあった。これまで同行はCMにイメージガールを起用していたが「『イメージガール』という性別にこだわる必要はないのではないか」という社内の声もあったことが、生成AI活用のきっかけの一つとなったという。


沖縄海邦銀行の新里さん(左)と阿部さん(4月24日、那覇市の沖縄海邦銀行本店)

沖縄の経済シーンに伝えたかったメッセージ

 沖縄海邦銀行は、沖縄の地銀としては売上高で琉球銀行、沖縄銀行に次ぐ3番目の規模ながら、第二地方銀行として個人や中小企業のニーズにきめ細かく応える「距離の近い関係」を持ち味にして、沖縄経済に貢献している。

 その距離の近さがあるからこそ、沖縄海邦銀行の今回のチャレンジが、中小企業主体の沖縄の経済シーンへのメッセージにもなり得た。

 総合企画部 経営企画担当の新里康さんは「金融機関は個人情報をかなり多く扱うので(情報をオンラインにどんどん入れていく)生成AIを本来の業務に取り入れることは、社内リテラシーやセキュリティーの面においても導入まで少しハードルが高いのですが、今回のCM制作では個人情報を扱うことがありません。私たちのような地域の小さな銀行がAIを活用することで『今話題になっているAIって、案外身近に使えるものですよ』と発信できたこともよかったです」と話す。

 昔ながらの小さな企業では、AIのみならずITやデジタル技術の活用が立ち遅れる傾向にある。新里さんは「沖縄県内の企業もまだまだデジタル化が進んでいない部分があります。今のやり方でまだ大丈夫だったとしても、もしいつかデジタル化をしなければならない局面に立たされた時にその知識が追い付いていなければ対応できません」と危惧する。今回の生成AI活用CMについて「企業側とDXの話を始める切り口にするという意味でも、CM自体がポジティブな印象を持ってもらえると思います」と話す。

 金融機関としては全国初の生成AIを活用したテレビCM。沖縄海邦銀行のスローガン「Beyond the Bank=銀行を越えてゆく」の通り、新しい取り組みを通して中小企業の道しるべとなるべく背中を見せた。阿部さんは最後にこう語った。

 「自分たちも小さな企業ですが、生成AIでCMを作ることができました。中小企業がAIやデジタル化にチャレンジして、できるだけ本来の業務に時間を割けるようになることで、もっと沖縄が元気になると思います」

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