「外国人嫌いの国は経済が停滞する」は本当か いや、日本には当てはまらないシンプルな理由:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
米国バイデン大統領が「日本は外国人嫌いで移民を望んでいない」などと発言したが、日本の移民受け入れ状況は実際のところどうなのか。経済との関連性を見ると……。
「国破れて移民あり」の未来
生産性についても、目もあてられない。「DXで生産性アップ!」とかいろいろ言っていたが、2023年の日本の時間当たり労働生産性は52.3ドル(5099円)でOECD加盟38カ国中30位だ。ASEAN諸国に追い抜かれるのも時間の問題だ。
……ということを言っても、おそらく日本が「移民政策」をやめることはできない。「外国人労働者受け入れ拡大」を要望している中小企業の経営者団体「日本商工会議所」は、自民党の有力支持団体だ。ここと敵対したら落選議員がたくさん出て、政権維持も難しい。つまり自民党が与党である限り、どんなに賃金が低くなっても「外国人労働者受け入れ拡大」は続いていくのだ。
このように日本の政策というのは、それがどんなに悪い影響が出てきたとしても、ブレーキの壊れたダンプカーのように一度走り出したら誰も止められないのだ。
いや、止まらないどころか、「加速」していく恐れもある。先ほどの朝日新聞調査で、「外国人労働者の受け入れ拡大」に賛成と答えた割合が大幅に増えたのは、60代と70代だ。70歳以上は38%(2018年)だったのが62%に、60歳以上も同35%から63%に増えている。
外国人労働者に自分の介護をしてもらいたいということなのかもしれないが、日本人は歳を取れば取るほど「外国人労働者をたくさん受け入れたい」と思う傾向があるのだ。ということは、高齢化が加速する日本は「移民歓迎ムード」がさらに高まっていく可能性があるということだ。
実際、今回のバイデン大統領の発言を受けて、「確かに日本の移民政策は遅れている。先進国の責務としてもっと積極的になるべきだ」なんてことを主張している、立派なインテリ紳士もたくさんいる。「共生社会」「多様性」という美辞麗句が並べられると、「より良い世界を築くために日本も移民を受け入れるべきだ」と思う人も増えるだろう。しかし、それは日本の低賃金・低生産性にも歯止めがかからないということでもある。
「地獄への道は善意で舗装されている」ということわざがあるが、今のわれわれは「より良い世界」を目指して地獄へ向かって一直線に進んでいるような状況なのだ。
「国破れて移民あり」という未来がもうそこまで近づいている。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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