2015年7月27日以前の記事
検索
連載

「自分は知っている」は思い込み――山中哲男氏が「経営者こそ相談すべき」と語るワケビジネスを成功に導く「相談の力」(2/3 ページ)

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

できるビジネスパーソンが「時間がない」と言わないワケ

 まずは予防相談についてです。当たり前ですが、物事を前に進めるには、できるだけ行き詰まらないようにしなければなりません。そのための相談が予防相談です。

 行き詰まる前、つまり行動を起こす前の構想やアイデア段階のことを私は「見立て」と言っています。未検証の思い付きで良いはずの見立てが1つしか浮かばない場合はかなり危険なサインです。すぐに相談すべきタイミングです。

 物事には、必ず複数の選択肢があるものです。選択肢とは可能性の数です。行動を起こす前の段階では、発想の自由が許されていて選択肢も多いでしょう。にもかかわらず初期の段階で選択肢が1つしか見えていないのは、「この選択肢が良いに違いない」と思い込んでいる場合が多いはずです。可能性を広げるために、このタイミングで相談してみるのが良いでしょう。

 時間がないと感じ始めたときも相談タイミングです。「時間がない」「タイトなスケジュール」と言われた相手は、無理をしてでも納得できない意見や情報に基づいて意思決定しなければと感じてしまいます。これは危険な兆候です。

 さらに厄介なのは、こうした言葉は「計画」の実施に近づくほど、関係者の口から発せられるという点です。商品であれば発売日、サービスであればローンチ日が迫ってくると、普段は冷静な人でも視野が狭まります。目的に立ち返って試行錯誤するよりも、計画通りに進めることを優先しがちになるのです。だからこそ、時間がないと感じたときは誰かに相談してみましょう。「本当に時間がないのか」「本当に早くやらなければならないのか」と問い直すことが必要です。

1週間行動できていないはキケン信号

 対処相談の分かりやすいタイミングは、1週間を振り返って、何も行動できていなかったときです。例えば、「山中さん、実はこういう課題で困っているんです」と言ってアドバイスを求めてくる人に、「なるほど、そうなんですね。課題は分かりました。それで、課題を検証するために最近どんな行動をしたんですか?」と質問すると、言葉に詰まってしまう人がいます。課題が見えているのに、それに対するネクストアクションが浮かばず、立ち止まってしまった状態です。

 目安として意識しておくべきなのが「1週間」です。1週間まったく行動できなかったら、対処相談のシグナルといえます。「何もやっていないのは、忙しかったから」と思う読者もいるでしょう。しかし、よく聞いてみれば「何をやれば良いか分からなかったから」という人も多いのです。


相談までの目安は「1週間」(画像提供:ゲッティイメージズ)

 ネクストアクションが見えている場合は、何らかの行動を起こします。自分の課題に対するネクストアクションが明確であればあるほど行動しやすいので、忙しいことはあまり理由になりません。むしろ、ネクストアクションが見えないときや曖昧(あいまい)なときは、確信が持てないために優先順位を下げてしまいがちです。その結果、課題に向き合うコミットメントが下がってしまうのです。

 事業は、常に手足を動かし続けることが大切です。立ち止まった時間が長いほど、それまで蓄積してきた情報は陳腐化していくもの。検証したことも、考えたアイデアも、他のことに時間を使っているうちに忘れてしまいます。1週間何も行動できていないときは、ぜひ誰かに相談してみてください。相談することも、物事を前に動かすための立派なネクストアクションです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る