自分で働く場所を構築する共創フロア“ライオンらしさ”も随所に
本社ビルに入ってすぐに目を引くのが「ミント畑」だ。“ライオンらしさ”を感じる1階の受付空間では、二ホンハッカ、ペパーミント、スペアミントの3種類のミントを栽培している。ミントの香りを体験できるスプレーを設置している他、ミント畑は実際に手で触れ匂いを楽しむことができる。
また、吹き抜ける風や水流、鳥のさえずりなどのサウンドマスキングが施され、自然を感じられる空間を作り上げた。受付の横には、創業者の小林富次郎の銅像と言葉、創業当初の歯ブラシなどを展示しており、歴史も感じられるようにした。
来客スペースとなる2階には、会議室と応接室を配置した。それぞれの部屋の名称に「バファリン」「キレイキレイ」「クリニカ」「ルック」など、おなじみのライオン製品を冠している。また、社外の人でも使えるフォンブースも用意している。
1階から4階までは社内外の交流を意識し、中階段で行き来できるようにした。
2階から階段を昇ると、広々とした空間が現れる。4階の共創フロアだ。このフロアは、机やいすを自由に組みわせ、レイアウトを変更できるのが特徴だ。天井からつり下げられたパーテーションは、部屋中に張り巡らされたレールを通して自由に移動できる。取材時は、パーテーションで四方を囲み、個室のようにして集中席を作ったり、適度に開放感を演出して会議したりする様子が見られた。
「今回のオフィスは10〜20年後も通用できるものを目指しました。そのため共創フロアはあえて作りこまず、将来生じるであろうニーズの変化にも対応できるように可変性を意識したのです」
4階にも“ライオンらしさ”は垣間見える。ライオン製品の空容器を使用して作ったライオンちゃんや、同社で昔販売されていた製品、社内デザイナーの作品などを飾るアーカイブ展示スペースを用意した。オフィスを歩くだけで、ライオンの企業精神に触れられる仕掛けを施している。実はこの展示スペースは、従業員からの提案だという。西本氏は「展示スペースを作りたいと従業員に言われ許可したのですが、想像以上に新しい学びにつながる史料が多く出てきて、それに合わせて展示スペースを作り上げました」と振り返る。
筆者が特に「さすが大手生活用品メーカーのライオン」と感じたのがリフレッシュエリアだ。上向き水栓の「歯磨き専用台」がリフレッシュエリア前に複数台設置されているのだ。コップ不要で、思い立ったらすぐに歯磨きができる。西本氏は「オフィス全体で90台もあります。このオフィスに来てから歯磨きが日課になった人も多いと思います」と笑って話す。
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