最上階にある“社食”にも仕掛けがいっぱい
最上階となる12階には、カフェテリア「olion」(オリオン)がある。オリオンのスぺルに注目してほしい。「LION」の前に「O」がある。従業員はもちろんパートナー企業を含めた社内外の仲間が「輪になって集まる」という意味を込めた。
従業員の健康に気を遣ったランチが日替わりで楽しめる他、午後5時30分になるとバータイムになる。アルコール類はもちろん簡単なおつまみも提供される。ビジネスパートナーからも人気だという掘りごたつ式の個室も用意した。
取材時は昼食の時間が過ぎていたが、ソロワークをしている人やコミュニケーションをとる従業員の様子が多く見られた。通常席の他、ボックス型のファミレス席があるのも人気の理由かもしれない。
食堂には大型スクリーンも設置してあるため、イベントなども開催可能だ。2024年4月の入社式は1階のミント畑の前で行われ、従業員はその様子を食堂のモニターで視聴した。
食堂からは眺めの良いベランダにも出られる。外の空気を吸って一息つける他、季節によってはこの場所でソロワークも夢ではない。最上階だけあって、夏には隅田川の花火を一望できるという。
従業員が生み出したさまざまなイベント
ここまで同社の新オフィスを見てきたが、オフィス運用から1年経過した今、従業員に変化はあったのだろうか。西本氏に聞いてみると「従業員が自発的に生み出すイベントが増えた」との回答が。
「移転後、縦割り構造の旧オフィスでできなかったことを発散するかのように、従業員からさまざまなアイデアが出ました。オフィス運営側が何か仕掛けたのではなく、従業員が自発的に新オフィスでやりたいことを提案しているので、私たちの方が驚いているくらいです」
従業員が企画したイベントの一つに、休日ハックとのコラボがある。休日ハックは、ライオンの新規事業開発プロジェクトで生まれた企業だ。台東区と連携してオフィス空間を活用した謎解きイベントや、謎解きの要素を取り入れた新入社員向けのオフィスツアーを開催した。
「他にも、ライオンのラグビー部『ライオンファングス』が従業員向けにトレーニングレッスンを始めたり、子どもがガラスにお絵描きをするセットを導入したりしました。お絵描きイベントは、当社の社長と社員の会話から生まれたもので、親子ルームのガラス壁に水拭きで消えるクレヨンを使って“落書き”をしてもらったのです。子どもたちは大喜びでした。従業員の創造性は今後も尊重していきます。次はどんなオフィスの活用方法を提案してくれるのか、今から楽しみにしています」
典型的な縦割り構造のオフィスから、主体的な働き方や社内外の共創など、いわば正反対となるオフィスを誕生させたライオン。オフィス運営から1年が経過し、従業員自らがオフィスの新しい活用方法を発案している。
同社のオフィスは、従業員の居心地の良さとコラボレーションが可能な刺激に満ちた空間の両立に成功させた好例といえるだろう。ポストコロナ時代の新しいオフィス構築を考えている担当者は参考にしてみてほしい。
著者プロフィール
太田祐一(おおた ゆういち/ライター、記者)
1988年生まれ。日本大学芸術学部放送学科で脚本を学んだ後、住宅業界の新聞社に入社。全国の工務店や木材・林業分野を担当し取材・記事執筆を行った。
その後、金属業界の新聞社に転職し、銅スクラップや廃プラリサイクルなどを担当。
2020年5月にフリーランスのライター・記者として独立。現在は、さまざまな媒体で取材・記事執筆を行っている。X:@oota0329
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