コラム
なぜカスハラが増えているのか 2つの要因:企業姿勢が問われる(4/4 ページ)
カスハラは従業員の精神を蝕む。カスハラを放置すれば企業の存続を脅かすことになる。経営者はしっかりと認識すべきだ。
いろいろとカスハラについて述べてきたが、小生が最も訴えたいのはここからだ。要は「カスハラから従業員を守れない企業はその存続が脅かされる」ということだ。
まず当たり前のこととして、日常的にカスハラの脅威が存在して、その脅威から会社・店が自分を守ってくれないような職場に行きたい従業員はいないので、早晩、離職率は高まる。
(参照:日本労働組合総連合会「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」)
この人手不足の世の中で、人の補充はただでさえままならない。ましてや「この会社・店は従業員を守ってくれない」という口コミは今や燎原の火のように速く広まるので、求職者としてはそんなところは敬遠する。いずれ会社・店は回らなくなる。
その過程で職場の生産性は明白に下がる。先の日本労働組合総連合会の調査でもあったように、カスハラによるストレスに晒され続けると、(たとえ辞めなくて我慢していても)従業員は集中力を低下させモチベーションを失うので、職場の生産性低下に直結する。
カスハラ場面に直面した他の顧客は自分たちが後回しになることに苛立つと同時に「従業員が可哀そうで見てられない。あの会社・店ではカスハラを放置するんだ」と雇い主への嫌悪感を覚え、他の会社・店へ乗り換えることを検討しよう。悪評は千里を走る。
そうなる前に(そして法改正を待たずとも)企業は率先して従業員をカスハラから守る姿勢を明らかにしなければならない。さもないと従業員からも顧客からも選ばれなくなってしまうだろう。(日沖 博道)
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