取引先ごとに“バーチャル口座”を用意──請求書管理「Bill One」が、銀行サービスを始めるワケ(3/3 ページ)
Sansanは5月21日に、請求書管理サービス「Bill One」の大型アップデートを発表した。あわせて銀行代理業のライセンスを取得し、住信SBIネット銀行のBaaSプラットフォーム「NEOBANK」を活用した「Bill One Bank」を法人顧客向けに提供を開始する。Bill One Bankとは何か? なぜSansanが銀行サービスを提供するのだろうか?
Bill Oneビジネスカードを活用し「立替経費をなくす」Bill One経費
請求書発行サービスに加えて、法人向けクレジットカード「Bill Oneビジネスカード」を全社員に配布することを前提とした経費精算サービス「Bill One経費」も提供する。
Bill One経費は、Bill Oneビジネスカードの利用明細データと、経費申請時に添付された領収書画像を自動でマッチングし、立替経費そのものをなくそうというサービスだ。カードを利用すると、領収書などの証憑をアップロードするよう通知が飛び、利用者はその場でレシートを撮影すれば処理が完了する。
「Bill Oneビジネスカードを利用すれば、紙の領収書を保存する必要がなくなり、わざわざ経費申請のために領収書をまとめる作業も不要になる。また、経理担当者は領収書の内容を確認する作業が大幅に削減できる」(大西氏)
基本はカード利用だが、現金による支払いにも対応。さらに将来的には、交通系ICカードとの連携により、交通費の経費精算も自動化する予定だ。
Bill Oneプロダクトラインアップ充実でARPU向上へ
急成長を続けるBill Oneだが、大企業シフトによる顧客単価(ARPU)の上昇には頭打ち感が出始めている。この課題を克服し、さらなる成長を実現するためには、プロダクトラインアップの拡充が鍵となる。
今回発表された請求書発行サービス「Bill One発行」と、経費精算サービス「Bill One経費」は、まさにこの戦略に沿ったものだ。請求書の受領から発行、経費精算まで、経理業務のペインを解決することで、Bill Oneの提供価値を大きく高めるのが狙いだ。
これにより、既存のBill One利用企業に対して、追加サービスの利用を提案するクロスセルが可能になる。請求書の受領と発行を一気通貫で行えば業務効率は大きく向上するし、経費精算の自動化は経理担当者の負担を大幅に軽減できる。こうしたメリットを訴求することで、顧客単価の引き上げにつなげていく考えだ。
請求書受領ではエンタープライズを中心に確固たるポジションを築いたBill One。しかし、請求書発行や経費精算は、さまざまな競合がひしめく領域だ。しかもBill Oneの3つのプロダクトは、同時に導入することの機能的なシナジーは特にない。「月次決算の加速」に向けて無駄な業務を自動化するという、Bill Oneプロダクトに共通するビジョンを、どこまで顧客は評価するか。それが新プロダクト成功の鍵になりそうだ。
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