新卒の早期退職、背景に「10年で180度変わった価値観」 辞めないOJTを探る:労働市場の今とミライ(1/2 ページ)
新入社員の早期退職が話題だ。そのきっかけの一つに「OJT」があるだろう。10年でガラッと変わった新卒の価値観を比較しながら、辞めないOJTについて考えていく。
新入社員が入社して1カ月以上が経過した。今は配属先で上司や指導役の先輩からOJT(職場内教育)を受けている時期だ。
新人にとっては会社の状況が大体分かり、このまま今の会社で働き続けるのか、あるいは時期を見ていずれ転職しようかと、考え始める頃でもある。
新人の早期離職が話題になっているが、よほどの事情がない限り、入社数カ月で辞めるのは転職するにもリスクが高い。普通の新人は、たとえ職場とのミスマッチを感じても退職を匂わせる雰囲気はおくびにも出さず、隠れて転職サイトに登録し、1年を過ぎたあたりで突然、退職届を出すのが一般的だろう。
離職の引き金となりやすいのがOJTの対応だ。最近の新入社員が会社や上司に期待することは10年前と比べて大きく変化している。
リクルートマネジメントソリューションズが「理想の職場・上司」の2013年の新入社員と2023年新入社員の比較を行っている。2013年の新入社員の理想と考える職場の上位は以下の3つだ。
- 皆が1つの目標を共有している
- お互いに鍛え合う
- 活気がある
しかし、2023年は以下の項目が上位を占める。
- お互いに個性を尊重する
- お互いに助け合う
また、2013年の理想の上司像は以下の3つだ。
- 周囲を引っ張るリーダーシップ
- 仕事に情熱を持って取り組む
- 言うべきことは言い、厳しく指導する
2023年はかなり異なる。
- 一人一人に対して丁寧に指導する
- よいこと・よい仕事をほめる
特に、厳しく指導する上司は2013年に比べて20.6ポイントも下がっている。
同社のトレーニングプログラム開発グループの桑原正義主任研究員は「10年前は組織に適応し、一致団結して目標を達成し、成果を上げることと同時に社員同士が切磋琢磨し、競争し合う職場が自分も成長していくことにつながると考えていた。しかし今は我慢して組織に合わせるのではなく、個性を尊重し合い、それぞれの強みを生かして助け合う組織を好む傾向になっている」という。
上司についても「情熱的で厳しい上司ではなく、一人一人の個を尊重し、丁寧に指導し、ほめてあげる上司を望むようになっている」と語る。まさに10年前とは真逆の組織・上司を求めている。
関連記事
定年後の再雇用、賃金50%減の「妥当性」は? ”異例の判断”が下った判例から考える
60歳の定年後、再雇用で賃金が下がるのはよく聞く話だ。再雇用社員の賃金が5〜7割下がるのが一般的だが、果たして妥当な設計なのか? ”異例の判断”が下った「名古屋自動車学校事件」の裁判例を基に考察する。「初任給バブル」の裏にある各社の思惑 給料を上げられない企業はどうなる?
ここ数年、大卒の「初任給」が高騰している。各社、どういった狙いから賃上げに踏み切っているのか? また、賃上げする体力がない企業はどうなってしまうのか?大卒の初任給引き上げ、ツケは「中高年層」に 解決策はないのか
賃上げ機運の中で、大卒初任給の引き上げを表明する企業が相次いでいる。初任給アップは景気の良い話だが、どうやら中高年層がそのしわ寄せを受けているようだ。どのような実態があるのか。賃上げの波、中小企業や非正規労働に届かず 大手の「満額回答」とギャップ色濃く
春闘で、大企業の「満額回答」が続く中、賃上げの波は中小企業や非正規労働者には届いていない。大企業とのギャップはなぜ生まれるのか、そのワケを探った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.