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日産、販売100万台増へ「新車攻勢」 “台数重視”の思わぬ落とし穴とは?(1/3 ページ)

100年に一度の変革期を迎える自動車業界で、日産自動車はどのようにして乗り切っていこうとしているのか。その販売戦略と目標について解説します。

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 『やっちゃえ、日産』はもう一度「やっちゃう」ことができるのか――。

 カルロス・ゴーン氏時代の拡大戦略が裏目に出た結果、2019、2020年と赤字に転落した日産自動車。その後、2度の社長交代、そして中期計画「Nissan NEXT」を経て業績は回復。2022年度は売上高は10兆5967億円、営業利益は3771億円、営業利益率は3.6%にまで回復しました。今期23年度は過去最高の売上高、13兆円、営業利益は6200億円を見込んでいます。

 復活を遂げた日産は3月25日、新中期計画「The Arc」を発表しました。足元の業績は好調であるものの、EVシフトや中国新興メーカーの躍進など、課題は山積み。100年に一度の変革期を迎える自動車業界をどのようにして乗り切っていこうとしているのか。今回はその販売戦略と目標について詳細に解説します。


日産自動車の販売戦略と目標を読み解く(ゲッティイメージズ)

全方位の新車攻勢

 今回の新中期計画The Arcの目玉は新車攻勢」。2024〜2026年の3年間に30車種が投入されることが発表されました。単純計算で1年に10車種が投入される計算です。かつて日産自動車が赤字に苦しんでいた2019年頃では、平均車齢が長い(=なかなか新車が投入されずに競争力が低い)という問題がありましたが、5年経った今、戦略は大きく変わり、新車攻勢で成長を遂げる戦略となっています。


2024〜2026年の3年間に30車種を投入すると発表(出典:日産自動車)

 そして、もう一つ特徴的なのは「全方位での新車投入。23年前半まではEVシフトが声高に叫ばれ、EVの投入が遅れている日本メーカーは時代の流れに取り残されている、と日産を含めて、多くの批判を受けてきました。

 しかし、2023年夏以降、潮目は徐々に変化していきます。EVシェアの成長が止まり、EVシフトを推し進めてきた欧米メーカーや新興メーカーの業績が悪化。生産調整や投資の見直しが相次ぎ、加速しすぎていたEVシフトが失速しました。これまでEVシフトに慎重であった日本メーカーの戦略が評価され、業績も2023年度は各社が過去最高に近い実績となる見込みです。そうした中で、日産も今回の新中期計画「The Arc」では内燃機関車を含む全方位の新車戦略を発表しました。

 30車種のうち内燃機関車が16車種、電動車HEV、PHEV、BEVが14車種。足元で好調+利益の十分に出る内燃機関車を刷新。その上で、次につながる電動車も合わせて投入していく――。市場のニーズに合わせた新車投入計画となっています。なお、今年度では内燃機関車として、QX60(北米、インフィニティ)、キックス、ムラーノ、アルマーダ/パトロールのモデルチェンジが発表されています。

 またこれほどの車種数になると日産単独ではさすがに開発が追い付きません。三菱自動車、ルノーとのアライアンスを活用して10車種、中国との合弁会社にて5車種を開発。単独での開発は半分の15車種の予定です。

 モデルチェンジ、新車投入はその車種の競争力が高ければ(高機能や低価格など)、販売を大きく伸ばすことができます。新車の開発リードタイムは3年から4年と言われています。2024〜2026年、新車がヒットし、日産がこれまでまいてきた種が花開く期間となるのかに注目です。

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