大量閉店から奇跡の復活 クリスピークリームが「ドーナツ戦争」から勝ち抜けたワケ(2/4 ページ)
2015年に大量閉店に踏み切ったクリスピークリームは、なぜ復活を果たしたのか――。そこには、時代に先駆けて顧客のニーズの変化をとらえた同社の姿があった。
転機となった「メルセデスベンツ」とのコラボ
クリスピークリームが2015年から2018年にかけて大量閉店に取り組む最中、転機となる新店舗があった。それが「Mercedes me Tokyo HANEDA店」だ。
Mercedes me Tokyo HANEDAは、高級車として高い知名度を誇る「メルセデス・ベンツ」が、羽田空港を利用する幅広い層に向けてブランドの魅力を発信する拠点として、2015年7月にアジアで初めて開設した新業態だ。
クリスピークリームは、施設内カフェスペースの中核店舗の一つとして、メルセデスが持つブランドの世界観を生かした期間限定商品を、オリジナルのマグカップやグラスとともに提供。メルセデスの日本市場における販売台数拡大にも一役買うこととなった。
その後もクリスピークリームは2016年9月開店の「イオンタウンユーカリが丘店」に同社初となるキッズスペースを併設。2018年10月開店の道内1号店「千歳アウトレットモール・レラ店」には、日本上陸当初話題を集めたドーナツ製造工場(ドーナツシアター)を併設し、道内多店舗化の足がかりとするなど、立地特性を生かしたコンセプトや付加価値を各店それぞれ反映させていくこととなる。
直近に開店した「ららぽーとEXPOCITY店」では、ムラサキスポーツの西日本旗艦店「ムラサキパーク」が店舗に隣りあっていることから「ドーナツとスポーツが一緒に楽しめる新コンセプト店舗」を掲げ、国内最大級のスケートボードパークをクリスピークリーム店内から観戦可能な構造を採用。国内ではクリスピークリーム旗艦店「東京国際フォーラム店」限定販売だった「オリジナル・グレーズド・ソフトクリーム」を導入するなど、ムラスポとの連携を意識したスケボーファンの心を掴む空間に仕上げた。
同じく大量閉店の最中、2017年5月に開店した「ディアモール大阪店」はカフェスタイルの比較的小規模な店舗であり、大都市圏内での小型店やテイクアウト専門店の拡大に向けた布石となった。これらの店舗はコロナ禍で伸長したテイクアウト需要の獲得に大きな役割を担った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ダイエーVS.西友の「赤羽戦争」はなぜ起きた? 駅東口2大スーパー、半世紀の歴史に幕
東京・赤羽駅東口を代表する老舗スーパーとして約半世紀にわたり親しまれた「西友赤羽店」と「ダイエー赤羽店」が今年、相次ぎ閉店。かつて両店は「赤羽戦争」と呼ばれる歴史的商戦を繰り広げていたことをご存知だろうか――。
快活CLUBは、セブンのようになるかもしれない 親会社のAOKIを追い越す日
AOKIHDが「スペースクリエイト自遊空間」を運営するランシステムと資本業務提携を締結し、6月8日付で連結子会社化する方針が発表された。実はこの2社、意外な前身を持ち、時代の変化による業態転換で今のかたちとなったことをご存じだろうか。
「そごう・西武」アジアに増える巨大店舗 大苦戦する国内と何が違うのか?
かつて国内最大の百貨店チェーンだったものの、経営再建・セブン&アイ傘下を経て今や日本国内に10店舗のみとなってしまった大手百貨店「そごう・西武」。その「そごう・西武」の新店舗がいま、アジア各地に続々と誕生していることをご存じだろうか。正念場を迎える日本の百貨店業界にとってのヒントを探る。
御堂筋が「シャンゼリゼ」に? 大阪の街並みに“激変”迫る
大規模開発が並行して進む大阪。街並みはこれから、どんな変貌を遂げていくのか――。前編では、大阪市の都心エリアにあたる「大阪駅周辺」「中之島」「御堂筋」「難波」の開発プロジェクトとその特徴を見ていく。
「二流の地」から「流通の覇者」へ イオンが成功した出店戦略とは
2022年2月28日、長崎県佐世保市にある総合スーパー「イオン佐世保店」が閉店した。この閉店は、イオングループにとって「ひとつの時代の終焉」を意味するものであった。実は、イオン佐世保店は「ジャスコ」として営業を開始した商店街立地の高層総合スーパーのなかで、2022年時点でも同業態のまま営業を続ける最後の店舗であり、1970年代における流通戦争の生き証人でもあったのだ。



