「そごう・西武」アジアに増える巨大店舗 大苦戦する国内と何が違うのか?(1/5 ページ)
かつて国内最大の百貨店チェーンだったものの、経営再建・セブン&アイ傘下を経て今や日本国内に10店舗のみとなってしまった大手百貨店「そごう・西武」。その「そごう・西武」の新店舗がいま、アジア各地に続々と誕生していることをご存じだろうか。正念場を迎える日本の百貨店業界にとってのヒントを探る。
かつて国内最大の百貨店チェーンだったものの、経営再建・セブン&アイ傘下を経て今や日本国内に10店舗のみとなってしまった大手百貨店「そごう・西武」。その「そごう・西武」の新店舗がいま、アジア各地に続々と誕生していることをご存じだろうか。
EC(ネット通販)の拡大や、郊外型ショッピングモールへの顧客流出など、百貨店業界を取り巻く環境は「そごう・西武」に限らず、厳しさを増している。若年層の取り込みも急務だ。
今回は、台湾や香港に間もなく開業する「そごう」3店と、それら海外店舗の「日本の百貨店とは異なる特徴」を紹介したい。正念場を迎える日本の百貨店業界にとってのヒントがたくさん詰まっているはずだ。
著者紹介:若杉優貴(わかすぎ ゆうき)/都市商業研究所
都市商業ライター。大分県別府市出身。
熊本大学・広島大学大学院を経て、久留米大学大学院在籍時にまちづくり・商業研究団体「都市商業研究所」に参画。
大型店や商店街でのトレンドを中心に、台湾・アニメ・アイドルなど多様な分野での執筆を行いつつ2021年に博士学位取得。専攻は商業地理学、趣味は地方百貨店と商店街めぐり。
アイコンの似顔絵は歌手・アーティストの三原海さんに描いていただきました。
ドーム球場に併設 台北の巨大そごう
最初に紹介するのは、台湾・台北市などでそごうを展開する「遠東そごう」の新店舗「遠東そごうシティ台北ドーム店」だ。
遠東そごうはそごうグループと台湾の建設会社による合弁会社「太平洋そごう」として1987年に1号店(現・遠東そごう台北店忠孝館)を出店。そごうの海外1号店だった。
現在は台湾の大手企業集団「遠東グループ」が「そごう・西武」のライセンスを受けて営業しており、23年時点で台湾各地に「遠東そごう」7店舗を展開している。
新店舗となる遠東そごうシティ台北ドーム店は、台北ドーム(台北大巨蛋、台北市信義区)に併設される商業施設の核店舗として出店。台北ドームは台湾政府と台北市によって計画された台湾初の多目的大型ドーム球場で、23年12月に球場部分が完成した。
完成したばかりの台北ドーム(台北大巨蛋)。そごうが今年出店するのは併設される商業ビル部分。ドーム北側(右上)の平屋の建物は日本統治時代の煙草工場跡を保存活用した「松山文化創意園区」で、ドームもかつて工場の敷地内だった場所だ
この台北ドームは球場エリアのほかに、商業施設・シネマコンプレックス・オフィスなどを併設している。そのうち遠東そごうが出店する商業施設部分は、地上8階・地下2階建て、店舗面積はなんと約4万坪(約13万平方メートル)で、かつて日本一の面積の百貨店だった「そごう横浜店」はもちろん、これまで世界各地に存在したどのそごうよりも広い巨大百貨店となる見込みだ。遠東そごうによると、24年春にも1期開業を目指しているという。
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