水平対向+シンメトリカルAWDをアイデンティティーとして取り戻すスバル:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
スバルの戦略がずっと分からずにいた。「スバルは一体CAFE規制をどうやってクリアするつもりなのか?」ということだ。しかし水平対向ユニットが、CNFが使えるユニットになっていくことが示されて、筆者の中でようやくいろんなことがつながった。
水平対向エンジンとシンメトリカルAWD
いや別に水平対向の燃費が悪いということを言っているわけではない。この議論で問題にしたいのはむしろ、ここしばらく選択肢がなく諦めてきたエンジンのツヤである。不思議なことに燃焼効率をとことん高めていくと、どんどんエンジンのツヤがなくなりフィールが悪くなる。それでも化石燃料を使っている間はCO2を減らすという最重要課題を前に文句を言える状態ではなかった。
それが変わる。そこで藤貫CTOは決断した。水平対向を残そう。水平対向は熱効率が悪い。それはもう機械の素養としてどうしようもない。機械効率の合理性からいえばそういう話でしかない。しかしながら独特の回転フィールや振動の少なさなど、エンジンとして個性がある。CNFの時代にはもう一度そういう価値を訴求できるようになったのだ。
こうしてスバルは、長い逡巡の後に、水平対向エンジンとシンメトリカルAWDをスバルのアイデンティティーとして大切にしていくことを決めたのである。
今後ZEV規制のルールがCNFをどう扱うのかはまだ分からない。仮にZEV規制が認めるゼロエミッションビークルがBEVだけに限られたままだとすれば、スバルは多くのBEVを売らなければならなくなるが、同時に水平対向のHEVも増えていく。スバルはようやく具体的な未来を指し示したのである。
プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
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