物流2024年問題の解決には、業界再編が不可欠ではないか:日本の物流がパンクする前に(3/3 ページ)
物流2024年問題の解決に向けて物流各社の改善努力は続いているが、抜本的な解決のためには業界再編による体力アップとネットワークの拡大しかないのではないか。
今の「運送会社に対し荷主が圧倒的に有利な交渉力を持つ」構図になっているそもそもの原因は、1990年にいわゆる物流2法(貨物自動車運送事業法・貨物運送取扱事業法)が施行されて経済的規制が大幅に緩和されたため、小さな事業者が増え過ぎたことにある。
そして彼らの大多数は大手・中堅事業者の下請けに入り、この業界での多重下請構造が成立した。そしてその構造下では小さな事業者はピンハネされた運賃しか受け取れず、しかも十分な荷量を確保できない中小事業者は価格ダンピングで仕事を確保する策しか思いつかない。
供給余力が一挙に増えたため、無茶な条件を平気で提示し、「嫌なら他に頼むけど、いいの?」と高圧的な振舞いをする荷主や元請運送事業者がむしろ一般化してしまったのだ。実際のところ、荷主企業の物流部門といえば「いかに運送会社を叩いて物流費を削減できたか」で評価される時代がずっと続いてきた。
そのしわ寄せが下請事業者の各ドライバーに対し、不当に安い賃金での長時間労働という形で及んでいたのがこれまでの業界実態だ。
だから今回の「2024年問題」を解決しながら運送会社がまともな経営で利益を出し、ドライバーが人並みの生活をできるようになるための解決策は、ズバリ「業界再編」しかないと考える。
つまり中小事業者同士が合併して大きくなるか、大手・中堅事業者が中小を吸収買収してさらに大きくなるのだ(中小同士の集団が資本の独立は維持したまま手を結んで広域連合体を形成するという方法も理論上は考えられるが、各社の利害調整が難しいので現実的ではないと思われる)。
「お山の大将」でいたいという中小事業者の経営者の気持ちはよく分かるが、中小同士での我慢比べで互いの体力を消耗させるばかりで先行きの展望がないのでは、続ける意味がない。そもそも従業員と経営者の生活が成り立たなければ話にならない。
日本の物流がパンクする前に、トラック事業者が各種対策のために必要な投資やコスト増に耐えられる体力を確保しつつ、ネットワークの範囲を拡げ、荷主との交渉力を大きく引き上げるには事業再編しかないと小生は考えるが、いかがだろう。 (日沖 博道)
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