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「日高屋化」する幸楽苑 ラーメン店から町中華へのシフトで復活できるか長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)

不調が続いた幸楽苑が、復調の兆しを見せている。2023年に復活した創業者の手腕が光っているといえるが、よく見ると「日高屋化」している様子もうかがえる。

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今後は「4大町中華」に注目

 好調の要因として、まずは出店戦略の見直しが挙げられる。これまで出店する場合は駅の乗降客数5万人を目安にしてきたが、競合がなければ2万人台でも出店するように変更した。また、これまで出店していなかったロードサイドを開拓。2024年2月期決算短信によれば、新規出店した18店のうち半数の9店がロードサイドであった。


日高屋のヒット商品、野菜たっぷりタンメン590円

 商品としては、2023年3月に発売した「日高ちゃんぽん」、同10月に復刻した「温玉旨辛ラーメン」、さらに季節商品の「冷麺」や「チゲ味噌ラーメン」などが好評を博している。最近はお酒に合う辛いメニューが増えており、同年12月に「ドラゴンチキン」「明太子ボテトサラダ」などもメニューに加わった。ドリンクでも、紹興酒を使った「ドラゴンハイボール」や、ウイスキー「陸」を使った「陸ハイボール」を相次ぎ投入。ちょい飲みを強化した結果が好業績につながった。


日高屋はおつまみとして、辛いメニューを追加。写真はドラゴンチキン

日高屋、充実する安価な200円前後のおつまみメニュー。明太子ポテトサラダとやきとり

 ラーメンの種類が増え、ちょい飲みを視野に入れた定食メニューで業績回復を狙う幸楽苑は、日高屋の牙城である駅前に対応する業態に変化してきた。今後の駅前進出もあり得るだろう。一方、辛いメニューやアルコールの強化で、ちょい飲みの需要を喚起する日高屋は、定食メニューが終日食べられることから客層が広く、野菜たっぷりタンメンのヒットで女性客にも強い。幸楽苑の牙城であるロードサイドへの出店加速へと舵を切った形だ。

 両チェーン共に、タッチパネルや配膳ロボットを活用して人件費を抑えていること、セットで割引するメニューで単価を上げるのに成功している点も、戦略が似ている。

 従来の「ロードサイドの幸楽苑」に対して「駅前の日高屋」という、それぞれの出店エリアが異なり、住み分けがなされてきた時代は終わりつつある。今後は餃子の王将と大阪王将を加えた、町中華の4大チェーンが競り合いながら、後継者難で減少する個人店に代わって、全国に浸透していくのではないだろうか。


陸ハイボール。ウイスキー「陸」を使用。330円

日高屋のロードサイド店

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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