2024年版カオスマップ発表から考える、リテールメディアのこれから 発展には10ステップが必要だ(3/3 ページ)
2024年版のリテールメディアカオスマップが発表となった。そうそうたる顔ぶれが並んでおり、まさにリテールメディア業界の幕開けといえる状況にあるといえるだろう。筆者は今後さらにリテールメディアが発展するには、10ステップが必要だと説く。
リテールメディア発展の10ステップ
今後、リテールメディアは次のような10のステップで発展していくことが予想されます。
(1)一部のイノベーティブカンパニーがリテールメディアの可能性に気付き、先んじて着手
(2)アーリーアダプター企業が追随しリテールメディアの構想を策定し広告会社などと協議を開始
(3)市場を牽引する主要なプレーヤーがメディア産業の確立へと手を取り合う
(4)アーリーマジョリティ企業が構想策定やメディア設計準備を開始
(5)メーカー向けの広告提案モデルやKPIが確立
(6)メーカーにおける成功事例が蓄積、データ分析精度の向上
(7)中堅・中小小売業も市場参入
(8)小売業横断型のリテールメディアサービスが拡大
(9)リテールメディアで得たデータを主事業である小売のマーケティングに活用し価値拡大
(10)グローバルでも同様のモデルで収益拡大
現状は(3)辺りであり、これから求められることが(4)〜(5)です。(4)は各企業のスタンスによって判断は分かれることから、(1)〜(2)の企業の成果状況に影響されることが多い部分です。 成果にはリテールの収益だけではなく、広告を出稿したメーカー側の成果も含まれます。そもそもリテールの成果とメーカーの成果は対をなしているといっても過言ではありません。顧客への成果なくしてビジネスの継続なし、だからです。
そのため、今後リテールメディア市場拡大の鍵を握るのがメーカーへの提案モデル・KPIの確立です。広告費用を投じるメーカーは、既にマスメディアやオンラインメディアを含め、多角的に広告を展開しています。マーケティングのレベルも日進月歩してきた歴史があるため、数値分析や費用対効果にもシビアです。新しいメディアであるリテールメディアは注目を集めやすいですが、費用を投じるメーカー側にとって、旧来の広告展開以上の価値や成果を感じれるものでなければ長続きはしません。
メーカーの対象商品のターゲットやブランドポジションはどのような状況か。そのメーカーが展開してきた広告の成果や課題は何か。どのようなKPIを上回ることが今後求められるのか。このような投げかけにリテールメディアの提案が明確に応えられ、かつコストメリットも提供できなくてはなりません。
YouTubeの視聴単価は4〜6円が相場だが、それと比較して店舗のサイネージはどうなのか。オンラインのバナー広告の表示単価は0.3円ほどであるが、ECサイトの広告表示単価はそれを下回ってくれるのか。あるいは、店舗の利用者とオンラインの相関率は何%なのか、競合商品購入者の移行率は何%なのか――など、求められる指標は挙げればキリがありません。
リテールメディアのインフラ基盤ができつつある中、今後のテーマは最大の難関である、お金を投じる顧客への価値創出です。メーカー側にとっても今までテレビCMやWeb広告に大きく投じてきた費用をシフトすることは大きな決断であり、慎重に判断することが予想されます。メーカーの商品によっても提案内容は大きく変動し、カスタマイズ力を求められることでしょう。小売業と、広告業界の柱となる可能性を秘めているリテールメディア市場において、メーカーの出稿判断と成果事例に大きな注目と期待が集まるところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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