AIバブルの象徴? NTTが“1000億円規模”を見込んで始める「データセンターREIT」とは:古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
NTTデータがデータセンターを投資先とするREIT市場に参入すると報じられた。REITとはそもそもどのような仕組みなのか。また、NTTデータが「今」参入する理由とは? 背景を踏まえて解説する。
REITを発行するメリット
NTTデータのように、事業会社がREITを発行するメリットは多岐にわたる。
まずは資金調達の効率化だ。REITを通じて大規模な資金を迅速に調達できるため、大規模な不動産プロジェクトを素早く展開できるようになる。
ちなみに上場REITの場合、流動性やガバナンス、投資家保護などさまざまな観点で規制が厳しくコストがかかる。このため、少数の投資家で資金需要が満たされる場合や、プロの投資家で運用する方が望ましい案件では、非上場REITとして発行されることが一般的だ。
今回のようなデータセンターのREITは、クラウドコンピューティングやAIなどの分野の拡大により成長が見込まれる。このため賃貸物件や商業施設のように、政策金利の高騰や感染症の流行などに伴う収益低下リスクが相対的に小さく、高い収益性が期待できる可能性がある。
また、REITによって上げられた収益は、90%以上を配当することで法人税がかからないと定められているため、ほとんどのREITは配当性向が90%を超えている。つまり、原指数や事業への再投資を前提とした投資信託、企業への投資などとは異なり、投資家は安定したインカムゲインを期待できるわけだ。
税制上の優遇措置により、事業会社は税負担を軽減し、より多くの利益を投資家に還元可能となる。
資金調達手段としての優位性が高まる
日本においてもじわじわと長期金利が上昇する中、大規模な資金を社債のような“借金”でまかなうコストが増加している。REITを活用すれば、企業にとっては資金調達のコストが低減される。投資家にとっても魅力的な投資商品となるので、一石二鳥であろう。
また、REITでは所有権は発行体に帰属するため、第三者割当増資などの株式希薄化するエクイティでのファイナンスと比較しても、発行体が有利なケースが多い。そのようなメリットを見込んで、NTTデータはデータセンターに特化したREITの組成を決断したと考えられる。
NTTデータのデータセンターREITは、同社のデジタル化推進と持続可能な社会の実現に向けた重要なステップとなるだろう。その背景には、第一にNTTの戦略的な投資と、AIバブルに伴うデータセンター市場の継続的な成長という側面がある。
直近では、日銀による金融政策正常化に伴って、社債や融資などの借入利息が発生する資金調達法が不利になってきている。この状況下でREITという手段を選択したことには一定の合理性があると言える。また、REITという形態は投資家のポートフォリオの多様化にとっても魅力的に映る可能性がある。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Xはこちら
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