「プッチンプリン出荷停止」はなぜ起きた? “ベンダーのせい”にできない根深き問題:有識者に聞く(2/6 ページ)
近年、大手企業のERP導入失敗事例として注目を集めたのが「プッチンプリン問題」である。この問題の原因について、ベンダーの能力不足や、企業のIT投資に対する姿勢を指摘する声が多いが、問題はそう単純ではない。
ERPとは何か? 情報共有で企業経営を効率化するシステム
ERPは、企業内のさまざまな部門で行われている活動を統合し、全体最適化を図ることで経営効率を高めることを目的としている。廣原氏は「会社全体が有機的に動くように活動すれば無駄がなくなり、効率化されて生産性が上がる」と、ERPの効果を述べている。
――そもそもERPとは一体何なのでしょうか。言葉としてはよく聞きますが、いまひとつピンときません。
廣原氏: ERPとは、Enterprise Resource Planningの略で、企業全体の経営資源を有効活用するための概念のことを指します。ERP自体は概念になっていて、それを実現するためのソフトウェアがERPパッケージとかクラウドERPとか呼ばれているものです。
――なるほど。つまり、ERPという概念を実現するためのツールが、ERPパッケージやクラウドERPということですね。ではERPというのは、どんなソフトが含まれているのですか?
廣原氏: 広い意味でERPというのは、企業の業務全般をカバーするものです。具体的には生産管理、販売管理、調達管理、債権債務管理、会計、人事などあらゆる業務を含みます。理想を言えば、1つのソフトウェアでこれら全ての業務を賄えるのがERPです。
――1つのソフトウェアで企業の全ての業務を、というのは理想ですが、現実的には難しいのでしょうか。
廣原氏: そうなんです。現実には、グローバルレベルの大手ベンダーのERPでも、1つのソフトウェアだけで会社の全ての業務を完全にカバーすることは難しいです。ですので、コアとなる業務をメインにカバーしつつ、お客さんが必要な部分を選んで使えるような、ある程度幅広い機能を持ったERPソフトが主流になっています。
広い意味でのERPは、会計から生産管理、販売管理、調達管理、債権債務管理、人事などあらゆる業務をカバーする。ただし最近は、必要なコンポーネントを組み合わせて次第にERP化していくコンポーザブルERPという手法もある(提供:マネーフォワード)
――コアになる部分というのは会計ですか?
廣原氏: 会計は確かにコアな部分ではあるんですが、会計だけをERPと呼ぶのは語弊があります。実のところ、グローバルなERPを導入している日本企業の多くは、会計機能しか使っていないケースも多いと思います。でも、本来のERPの考え方からすると、会計だけでは不十分なんですよ。
――となると、会計以外にも、例えば生産管理や販売管理、在庫管理なども含めて使ってこそERPと呼べるということでしょうか。
廣原氏: そういうことですね。会計ソフトというのは、ERPソフトの一部に過ぎません。ERPの本来の目的は、会計も含めた企業活動全体の効率化や可視化を実現することにあります。ただ、このあたりの捉え方は人によって異なるので「うちはSAPを入れているけどERPは入れていない」という人もいれば、「会計ソフトを入れたらERPを入れたことになる」という人もいるんですよ。
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