会員13万人超え ヱビスビール・ファンコミュニティーの「集客力」に迫る(2/3 ページ)
全国のヱビスビール好きが集まるファンコミュニティー「YEBISU BEER TOWN(ヱビスビアタウン)」。オンライン上に存在する“架空の”街には、2024年6月現在13万人を超える住民がいる。どうやって13万人もの巨大なコミュニティーでファン主導の運営を実現しているのだろうか。
ファンが運営に「超積極的」に参加する文化 どう作り上げた?
「住民のみなさんにはヱビスブランドのことをもっと他の人に伝えたいという思いがあり、熱量が非常に高い。新しい住民が増えるととても喜んでくれる」
YEBISU BEER TOWNの特筆すべき点は、こうした熱量の高いファンの存在だ。彼ら彼女らの中には、単なる参加者ではなく「BEER TOWN実行委員」として積極的にコミュニティーの運営にも関わっている人もいる。
企画の提案、投稿内容やコミュニティーのトンマナに対するフィードバックなど、実行委員達を中心に住民たちが街の運営に関わる。
例えば、2024年1月能登半島地震が発生した際、住民から「これだけ住民がいるのだから何か協力したい」という声があがった。そこから投稿キャンペーン企画が生まれ、寄付金を被災地に送る取り組みへとつながった。コミュニティー内で行う企画は、住民の声が反映されていることが多い。
こうした文化が醸成されている大きな理由は、萬谷氏ら運営が立ち上げ時から企業と住民のフラットな関係性を意識してきたからだろう。
萬谷氏は「熱量が高いファンとは単にブランドと消費者ということではなく、価値観でつながる関係性だと考えている。それはとてもフラットな関係であり、一緒になって新しいビール文化を作っていきたい」とし、「そうした中で、つながりとしての“ご縁”や“思い”を非常に大切にしている」と話す。そんな思いがあるからこそ、ファン同士が語り合う場の名前を「みんなの“縁”会場(宴を縁に)」にした。
こうしたブランド側の思いがファンにとっても心地よいからこそ、住民たちが自らコミュニティーを盛り上げようとしているのかもしれない。
「熱を絶やさない」ための工夫
同社はこの“住民が自走する文化”を築くために、コミュニティーの段階を見極めながら戦略を立てて施策を講じてきた。
萬谷氏はコミュニティー運営を始めた当初はターゲットを「最も熱量の高いファン」にし、コミュニティーの熱源となる存在を集めることに注力した。熱量がなければ、その後いくら裾野を広げても盛り上がらず、仮に人が増えても休眠者が増えていくだけになってしまう。だからこそ、最初は熱量が高い人を集め、その熱量が一層高まっていくことを重視した。
「最初から幅広くいろんな方がいるコミュニティーだと、投稿するのも緊張すると思った。だからまずは熱量が高く、ヱビスについて話したい人たちのための場所を目指した」
次に、そんな高い熱量で作られたコンテンツを外に向けて発信していき、新たな住民を増やしていった。既存の住民は「ヱビスビールを広めたい」「コミュニティーを盛り上げたい」と考えている人たちなので、新しい住民を歓迎。コミュニティー内の発信や投稿に「いいね」などのリアクションが増え、後から参加する人にとっても居心地の良い空間が形成された。このように段階を経て住民を増やしていくことで、活発さを保ちながら拡大することに成功した。
もちろん、住民たちのアクションには、ブランド側もしっかりと反応している。こうした循環が居心地を良くし、コミュニティーへ帰属意識を高めていくようだ。
「誰でもフラットに発言していい場所だと感じられる空気感がある。住民の皆さんが自由に発言しているという印象を持ってくれている」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
サンリオはなぜ強い? 「かわいい」だけじゃない、ファン作りの3つの極意
近年は大人でもかわいいキャラクターに「思わずハマってしまった」「推しキャラがいる」という人は珍しくありません。しかしなじみがない方は「大人なのに、かわいいキャラクター?」「なんであんなに夢中になるの?」「無駄じゃない?」――そんな風に思ってしまうこともあるのではないでしょうか。かわいいキャラクター業界をけん引する企業、サンリオでプロデューサーを務める池内慎一朗さんに、消費者を夢中にさせる、その裏側にある仕掛けについてお聞きしました。
資生堂の美容部員がインフルエンサー化 華やかな投稿に隠れたSNS戦略とは
美容部員と聞くと、百貨店やコスメショップの店頭に立ち、一対一で顧客の話を聞きながら接客するというイメージを持つ人も多いだろう。その一方で、資生堂インタラクティブビューティー(東京都中央区)には、デジタルでの活動に特化した美容部員が約40人在籍している。その背景について、同社に話を聞いた。
「黒づくめの組織」が起爆剤に? 『名探偵コナン』の映画がヒットし続けるワケ
『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』の勢いがすさまじい。だが、興行収入が大台を突破する理由は、コンテンツの魅力だけでは説明しきれない。
丸亀シェイクうどんの大ヒット 背景にある「あえてひと手間」が持つ効果とは……?
世の中には、「あえてひと手間」加えることでヒットした商品がたくさんあります。例えば、丸亀の「シェイクうどん」の大ヒットでも、「あえてひと手間」が効果的に作用しています。
D2Cはオワコンなのか 多くのブランドが淘汰された背景に“闇深い”事情
D2Cビジネスは冬の時代を迎えている。なぜ多くのブランドが淘汰されたのか……。背景に3つの理由がある。
「顧客の囲い込み」という施策への、強烈な違和感
LTV向上施策の失敗事例として、まず挙げられるのが「顧客の囲い込み」である。

