“ガラパゴス的風習”? 取引先同士の「株の持ち合い」解消が進むワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
企業間で株式を相互に保有し合う「政策保有株」。グローバル経済下においては批判されることも珍しくない。なぜなのだろうか。
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経営の効率化やグローバルな競争力強化の観点から「政策保有株」の売却が進んでいる。政府や規制当局が主導し、企業に対して株式持ち合いの解消を促進する方針を打ち出しており、企業はより透明性の高い経営を目指す必要性に迫られている。
そのルーツは1940年代、日本が第二次世界大戦に敗れ、GHQによる財閥解体が行われた頃にさかのぼる。旧財閥系の企業グループを中心に、各企業が互いの経営を安定させるための戦略として、株式を相互に保有する動きが生まれた。
また、当時は戦後復興の中で、取引先同士の結び付きによって企業間の長期的な関係性を重視する風土が醸成され、のちの高度経済成長期において重要な役割を果たしてきた。企業間で株式を相互に保有し合うことで、経営の安定や敵対的買収の防止を図ることが目的とされてきたが、その必要性は時代とともに低下し、グローバル経済下においては批判されることも珍しくなくなってきたのである。
2024年3月までに三菱電機は関係のある24社の政策保有株を売却し、豊田通商とトヨタ紡織は互いの持ち合い株を全て売却している。この動向は、日本企業の国際的な評価向上にもつながると期待されているが、本当のところはどうなのだろうか。
政策保有株のデメリットが目立ってきた
持ち合い株には多くの利点があった。例えば、トヨタ自動車とデンソーは、長年にわたり株式を持ち合うことで、部品供給の安定性を確保し、技術開発においても緊密な連携を維持してきた。このようなグループ内での株式持ち合い関係は、両社の信頼関係を強化し、共同での技術革新を促進する役割を果たしてきた。
株式を持ち合うことで、企業は相互に支え合い、共同での事業展開やリスクの共有が容易となった。これにより強固なネットワークを形成し、日本経済の安定と成長を支えたのである。
しかし、企業間の強固なネットワークがかえって国民生活に悪影響をもたらした例もある。株式を持ち合うことで、企業間の関係が固定化され、不健全な価格設定が行われるといった事例が発生した。
例えば、企業向けに設定された損害保険料でカルテルが発生した問題も、政策保有株が絡んでいるとされる。公正取引委員会の発表によれば、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険、損害保険ジャパンは、企業向けの損害保険料についてカルテルを行っていたという。4社は独占禁止法違反となるが、その一員として損保業界内での政策保有株の存在が指摘されていた。
このように、政策保有株が良好な取引関係の維持という趣旨を逸脱して、透明性の欠如や企業ガバナンスの問題を引き起こすことがある。海外の投資家が日本企業に投資する際、政策保有株があるとガバナンスの観点から評価を低下させざるを得ず、参入障壁となっている。
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