「天橋立」もあるのに日帰り客だらけ どうする? 老舗のお酢メーカーが追いかける“2つの街”:「美食の町」へ(1/5 ページ)
京都府北部の丹後エリアで、ある地域創生プロジェクトが進行している。「丹後を日本のサン・セバスチャンに」という壮大なビジョンのもと、過疎化に悩む地域を「美食の町」へと変貌させようとしている。
京都府北部の丹後エリアで、ある地域創生プロジェクトが進行している。仕掛け人は、創業130年を誇る老舗お酢メーカー「飯尾醸造」の5代目当主、飯尾彰浩氏だ。「丹後を日本のサン・セバスチャンに」という壮大なビジョンのもと、過疎化に悩む地域を「美食の町」へと変貌させようとしている。
世界的レストランガイド『ゴ・エ・ミヨ』に2店舗が掲載されるなど、着実に成果を上げつつある本プロジェクト。なぜ、お酢メーカーが町づくりに乗り出したのか。独自の戦略と、これまでの軌跡を聞いた。
宿泊客を増やすプロジェクト
京都府北部に位置する丹後エリア。宮津市、京丹後市、与謝野町、伊根町の2市2町で構成されるこの地域は、天橋立や伊根の舟屋など、独特の景観を誇る観光地として知られる。しかし、その魅力的な観光資源にもかかわらず、課題を抱えている。
京都府の統計によると、2022年の丹後エリアの観光客数は約461万人。そのうち宿泊客は約86万人で、宿泊率はわずか18.7%にとどまるなど、日帰り観光が中心となっていた。
さらに、観光客の平均消費額も低迷。2019年のデータになるが、京都市内の観光客の平均消費額が1日約2万円であったのに対し、丹後エリアを含む北部地域はその半分にも満たなかった。
行政側も、道の駅である丹後王国「食のみやこ」をリニューアルオープンするなど、観光客を増やそうと施策を打った。ところが、飯尾氏は異なる視点を持っていた。「行政の取り組みは日帰り客の増加に主眼を置いたもの。しかし、それでは地域経済の本質的な活性化にはつながらないと考えた」
むしろ、宿泊客を増やし、地域全体の経済循環を促進することが重要だと指摘する。そこで、「丹後を日本のサン・セバスチャンに」というビジョンを掲げ、地域の変革に乗り出した。
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