多忙極める経理に「今後ますます仕事が増える」 3つの必然的な理由:新連載「シン・経理組織への道」(1/2 ページ)
深刻な人手不足で、多くの経理財務部門が多忙を極めています。一方でその役割は高度化し、経営陣を支えるビジネスパートナーへの変革を迫られています。変革を遂げるには、どうすればいいのでしょうか?
企業成長への切り札として、CFO出身のCEOが次々と誕生し注目を集めています。CFOは過去の数字を取りまとめる経理財務責任者から、財務知見を生かして困難な経営課題にCEOと共に挑む存在へと期待や責任範囲が広がり、重要性は増していると言えます。
一方、CFO1人の意識変容だけでは経営に求められるさまざまな要件を満たすことは難しく、経理財務部門がCFOを直下で支えるビジネスパートナー(CFO組織)へと変革する必要があります。
従来の経理財務部門が変革を遂げるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。経理財務業務変革プラットフォームを提供するBlackLineが、年間150件以上行っているCFOや執行役、幹部職との対話において特に関心の高い「人材育成」「マニュアルワークの最小化」「AIなど最新テクノロジー活用」について、課題と対策を全4回のシリーズで解説します。
新連載「シン・経理組織への道」
- 第1回 経理組織に期待される役割と現場が抱える深刻な課題
- 第2回 経理人材の育成と確保
- 第3回 ERPの周辺に残るマニュアルワークの最小化
- 第4回 AIなど最新テクノロジーの活用
初回となる今回は、経理部門を取り巻く役割変化と深刻な人手不足の状況を整理し、その要因について考えます。
ただでさえ多忙な経理に、今後どんどん仕事が増えていく
日本企業で初めてCFOというポストが設けられたのは1995年のことです。28年前から現在に至るまで、多くの企業で取り入れられてきたこのポストの役割は近年、大きく変化しています。
CFOが管掌する領域は、従来の財務戦略や業績管理を中心としたものから、コーポレート戦略や投資判断、リスクマネジメントへと広がりを見せているのです。
それと同時に、CFOを支える組織においても、従来の経理財務部門の役割に加えてFP&A(Financial Planning & Analysis)を導入する企業が増えつつあります。
不確実性が極めて高い環境に迅速に対応し、企業価値を持続的に向上させるために、経営の羅針盤を担うCFOや経理組織に対する期待の高まりが具体的な変化として表れています。KPMGジャパンが2022年12月〜2023年3月に国内上場企業のCFOを対象に実施した調査においても、その傾向を裏付ける以下のような結果が出ています。
- 経理組織における優先度の高いテーマの1位は「中長期的な成長、中期経営計画の策定に対するさらなる貢献」(67%)、4位は「事業ポートフォリオの見直し、ポートフォリオマネジメントの強化」(36%)と、戦略や投資判断に関する機能強化が高い順位に
- 約8割の企業が、FP&Aの機能強化が必要と考えている
しかし、経理組織の機能強化には人材の育成、データやシステムの整備、人事制度・評価制度の変更など、やらなければいけないことがたくさんあります。
完全性と健全性を重視したいわば“企業の主治医”としての役割から、事業の可能性や投資家の期待を複眼的に捉え、コーポレート戦略や投資判断における意思決定に“参画“するビジネスパートナーへと進化するために、経理組織の改革はまだ始まったばかりなのです。
経理組織が現在取り組んでいるテーマ
では、変革を進めている、あるいはこれから変革に着手しようとしている経理組織は、具体的にどのようなテーマに取り組んでいるのでしょうか。当社が日本CFO協会と共同で実施したサーベイでは以下のような結果が出ています(グラフは回答があったテーマの上位10個を表示)。
この10個ののテーマを目的や手段などで整理すると、下図のように「経理機能の高度化」「組織・プロセス改革」「土台を固める・基盤を整備する」の3つのカテゴリーに分類できます。
どのテーマの優先順位が高いかは、企業規模や事業内容、子会社の数などによって異なります。また「機能高度化を目的に、今はプロセス改革に着手している」「財務諸表の信頼性を向上させるために、決算プロセスのデジタル化を推進している」など、それぞれが関連性を持っており改革の進捗度合によっても違いが出てきますが、この3つの分類では「土台・基盤」に関連するテーマの合計が最も多い結果となっています。
中でも最も多く耳にするのが「人材の確保と育成」であり、そこには経理の現場が抱える深刻な課題があります。
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