餃子の王将が絶好調 なぜ、値上げしたのに客が増えているのか?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
2024年3月期、餃子の王将を運営する王将フードサービスが初めて売上高1000億円を突破した。同社は値上げを実施したが、その後も客単価のみならず客数も向上させ、売上増を実現している。なぜなのか。
2024年3月期、餃子の王将を運営する王将フードサービスが初めて売上高1000億円を突破した。
2024年7月2日に公表された最新の月次動向でも、既存店売上高は前月比109.5%の77億600万円となり、過去最高売上を更新する見込みだ。
飲食業が広く物価高騰の影響を受ける中、多分に漏れず同社も値上げをした。ただし、値上げ前後で客単価のみならず客数も向上させ、売上増を実現している。なぜなのか。
値上げしたのに客数増──なぜ?
王将フードサービスは6月、物価高騰を受けて価格改定を実施した。一般に飲食店の値上げは消費者離れを招き、売上減少のリスクを伴う。
6月には、物価高騰を受けて価格改定を実施した。一般に飲食店の値上げは消費者離れを招き、売上減少のリスクを伴う。しかし、餃子の王将では値上げの前後で、客数が増加する現象が起きた。
6月の既存直営店客数は前年同月比で106.5%と伸びており、4月の102%、5月の104%を上回り、月を追うごとに伸長している。「値上げ幅よりも客数の減少が緩やかであれば成功」というのが一般の飲食店の値上げであるが、同社の場合は値上げしても客数が増えるというダブルの成功を実現している。
この成功の要因の一つとして、主要商品のレシピ改良による値上げ効果を各種キャンペーンによるお得感で相殺したことが挙げられる。過去最高の1000億円を売り上げた背景には、この他、価格改定後のブランド価値の維持、調理と接客の質の向上、効果的なマーケティング戦略、テイクアウト・デリバリーの拡充などが決算短信などからも読み取れるが、筆者はより本質的には「直営化」の経営戦略があってこそ成し得たものであると考える。
餃子の王将の計729店のうち直営店は543店、フランチャイズ店は186店だ。6月だけでも直営2店舗が新規開店したほか、フランチャイズから「直営化」した店舗も複数確認できる。
直営全店売上高は29カ月連続で同月比過去最高を更新しており、直営店への力の入れようがうかがえる。
ちなみに、店舗が直営かフランチャイズかは、公式サイトで店舗検索をかければ一目瞭然だ。店舗名の右側に「直営」か「FC」と書いていることで見分けがつく。餃子の王将ファンの間には「直営店で食べたい」というニーズがあり、その見分け方はWebサイトやSNSなどで広く共有されている。
「直営店ニーズ」が存在するのは、中華料理はマニュアル通りに作ろうとしても火の入れ方や鍋の振り方一つで味も変わってしまうもので、体得が難しい部類の料理であることも関係するかもしれない。品質のばらつきを避けたいという潜在的なニーズを「直営化」という戦略で充足させているのだ。
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