「100円セール」をやめたミスド V字回復の裏に3つの戦略あり(2/3 ページ)
2016年に100円セールを廃止し、近年は業績が振るわなかったミスタードーナツだが、ここにきてV字回復を遂げている。その背景には、3つの戦略があったようだ。
少子高齢化とカフェの台頭が影響か
ミスドの店舗数は2013年3月期末の1376店舗で頭打ちとなり、2020年3月期末時点では1000店舗を下回った。業績悪化を前に不採算店の閉鎖を進めたためである。ダスキンのフードグループ事業は主にミスド事業によるものだが、2013年3月期に売上高488億円・営業利益11億円だった同事業の業績は、2020年3月期には売上高362億円・営業利益6億円にまで縮小した。
ミスドの業績が悪化した要因としては「少子高齢化」と「カフェの台頭」の2点が考えられる。テークアウト主体でファミリー層を主なターゲットとするミスドにとって、子どもの減少はパイの縮小を意味する。また、高齢化に起因する健康意識の高まりが、高カロリーなドーナツから消費者を遠ざけたと考えられる。
また、都市部では外資系チェーンのカフェが競合であり、ミスドの凋落と好対照に業績を伸ばしてきた企業が多い。特にスターバックスはコーヒーのイメージが強いものの、甘さを求めて飲むフラペチーノ類が充実しており、ドーナツの有力なライバルとなる。
この間、ミスドは不定期で「100円セール」を実施し集客を図ったが、セール期間以外の売り上げが低迷し、2016年に終了した。なお、ダスキンは低迷の背景として「以前の1等地が1等地でなくなる商圏の変化もあった」と主張しており、業績悪化を前に不採算店の閉鎖を進めてきた。
一方、外食チェーンのほとんどが苦しんだコロナ禍では業績が伸びた。2020年3月期から24年3月期におけるミスドの国内チェーン全店売上高及び店舗数は次の通りである。
チェーン全店売上高:771億円→780億円→929億円→1055億円→1248億円
店舗数:977→961→979→998→1017
同期間中は発売した商品がいずれも好調な売れ行きとなった。また、テークアウト需要の高まりも追い風となった。前述の通りミスドはファミリー層を主体とし、売上高に対するテークアウト比率はおよそ6割だ。外出自粛ムードの中、家族で楽しめるものとして以前よりテークアウトとの相性が良かったミスドが注目されたのだろう。何回か実施した値上げも売上高をかさ上げした。
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