8月8日の夕方、宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生した。この地震は、想定される南海トラフ巨大地震の震源域の中で起こったことから、専門家らからなる評価検討会は臨時情報の「巨大地震注意」を発表し、1週間は巨大地震に備えた防災対応を求めた。多くの総務担当者は、防災備蓄品の確認に追われたことだろう。
備えがない企業が社会を混乱させる
そもそも、この防災備蓄品はなぜ必要とされているのか。首都圏での震災時に生じる帰宅困難者対策の一環として準備されているものの、もっと重要なことがあるのだ。それは、被災者の命を守る、ということだ。どういうことなのだろうか?
首都圏で想定されている直下型地震が発生すると、多くの建物が倒壊し、建物内への閉じ込めが発生する。救出のために発災から3日間は、公的機関は人命救助に最大限注力することになる。重機は被災地に急行せねばならない。道路を空ける必要がある。しかし、これを帰宅困難者の波が阻んでしまいかねない。
公共交通機関が停止し、ライフラインも麻痺(まひ)してしまったとする。企業に防災備蓄品がないと、従業員は徒歩で帰宅するしかない。東日本大震災直後の首都圏の様子を思い出してもらいたい。筆者はすし詰めの青梅街道をひたすら西に向かった。幹線道路は自宅に向かう人で、まるで満員電車のように混み合っていた。防災備蓄品がない企業が、従業員を帰宅させることにより、被災者の命が救えない事態が起きてしまうのだ。
さらに、別の観点もある。首都圏で大規模地震が生じると、環状八号線を取り巻く古い家屋が密集している地域で、大規模火災が生じることが懸念される。
郊外を目指す帰宅困難者の行く道に、その大規模火災が発生していたらどうだろうか。そのことに気付いても、後ろには膨大な数の人々が連なっているため避難できず、火災に巻き込まれてしまう……という二次被害も考えられる。
つまり、大地震発生直後に従業員を徒歩で帰宅させることは、従業員の命を危険にさらすことのみならず、社会に混乱をもたらす可能性があるのだ。
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