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紅麹で揺れる小林製薬からやっと出た「調査報告書」 遅すぎる対応から見る3つの問題(3/4 ページ)

紅麹関連の商品で死者を出して大きな問題となった小林製薬が、ようやく調査報告書を発表した。今回は同報告書から、同社の問題点を明らかにしていく。

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元会長には引き続き毎月200万円を支給

 3つ目の問題点である、同族経営の弊害についてはどうでしょうか。

 小林製薬は今回の不祥事でトップ交代となるまで、創業以来6代続けて(創業者を入れると7代)創業家の人間がトップを務めてきた完全な同族経営企業です。同族経営が必ずしも「悪」であるとは申し上げません。しかし、創業家トップが続くことで、トップが有言・無言を問わず圧倒的な力を持つことになります。

 結果、周囲にイエスマンが多くなって何事も創業家トップの判断に委ねがちになり、仮にトップが誤った判断をしてもそれに反論することなく追随してしまうようになるのです。世間的な非常識が、社内では堂々とまかり通ってしまうことにつながります。

 2023年、同じように大きな不祥事で世間を震撼(しんかん)させた中古車販売のビッグモーターは、その典型的な悪例であったといえます。強権の同族経営に対して社員は従う以外になく、次々と悪事に手を染めていきました。

 報告書を見る限りにおいて、小林製薬はビッグモーターのような創業家の強権経営ではなかったとは読み取れます。しかし役員一同が、当局への報告や製品の販売停止および回収に関して、判断しないトップに常識的な進言すらできなかったことは、相互けん制を失った同族経営の弊害であったといえるでしょう。

 同社は不祥事を受けて、小林一雅会長および小林章浩社長の退任を発表しています。一雅会長は取締役こそ外れるものの特別顧問として、章浩社長は引き続き取締役として健康被害の補償対応に当たるといいます。

 一雅氏には引き続き月額200万円の顧問料を支払うという事実には、世間から非常識だとの批判も上がっています。後任の山根聡社長も、ナンバー3として2006年から20年近くも取締役を務めている、いわば創業家の「番頭」であり、今回の役員人事からは同族経営の弊害を顧みて体制を刷新するという意欲は全く見えてきません。

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