昨今、企業の競争力を高めるための重要な要素として、人的資本経営が注目されている。特に中小企業は人的資本経営にどのような課題を抱いているのか、jinjer(東京都新宿区)が調査を実施した。
人的資本経営を「重視している」 しかし課題が
人的資本経営について「とても重要視している」中小企業の人事担当者は21.5%だった。「やや重要視している」(36.8%)と合わせて、58.3%と全体の半数以上が重要視していた。
実際に人的資本情報の可視化・開示に「取り組んでいる」人は11.3%にとどまった。人的資本経営を重要視しているものの、取り組めてはいない企業が多い様子が明らかになった。一方で「取り組むために準備をしている」(25.2%)、「取り組むことを検討している」(18.2%)人も一定数見られた。
人的資本情報の可視化・開示をしようとしたきっかけについては、「従業員のエンゲージメント向上施策を打つべく状況を把握したいから」「従業員の離職率を下げるための施策を打つべく状況を把握したいから」が、それぞれ29.0%と同率で最も多い結果となった。
人的資本情報の可視化・開示をする目的について、最も多い回答は「経営戦略実現に向けた人材戦略策定のため」となり26.5%。以降は「適切な人事評価を行うため」(24.7%)、「新規人材の採用強化のため」(24.1%)と続き、戦略や人事評価、採用に関連した内容が多く挙げられた。
人的資本経営を進めるにあたって、どのような課題を抱えているのか。最も多かったのは「業務過多で優先順位が上がらない」(36.4%)。その他には「採用難など、喫緊の取り組みに対する課題感が大きく思うように進まない」(35.8%)、「経営陣の理解が乏しい」(30.2%)、「人事部の人数が少なく思うように進まない」(26.5%)など、通常業務の忙しさや人的リソースの不足に関する課題感が多く見られた。
調査は8月26〜27日にインターネットで実施。中小企業の人事担当者302人から回答を得た。
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