人的資本経営、中小企業の取組状況は? 7割の経営者が「知らない」
中小企業の経営者たちはどれくらい人的資本経営に取り組んでいるのか、その実態をGDXリサーチ研究所が調査した。
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」。大企業では開示義務化を受けて取り組みが進む一方で、中小企業はどのような状況なのか。
GDXリサーチ研究所を運営するフォーバル(東京都渋谷区)が、中小企業の経営者を対象に調査した。
7割「人的資本経営、知らない」 取り組みにも消極的
人的資本経営について「知っており、他の人に説明できる」とした人はわずか3.8%にとどまった。「知らない」 「聞いたことはあるが、よく知らない」とした人は合わせて72.9%に上り、7割以上の人が人的資本経営について説明できないことが明らかになった。
人的資本経営に「取り組みたい」とした人は36.1%。最も多い回答は「どちらともいえない」で47.4%となり、取り組みたいと考えている中小企業の経営者は少数派だった。
人材育成に関する費用については「設定していない」とした人が最も多く79.1%に上った。人材育成に向けた予算が、そもそも十分に確保されていない現状がうかがえる。
人的資本経営に重要な従業員エンゲージメントについて、測定できるITツールを「導入していない」としたのは84.8%に上った。大半の中小企業において、従業員エンゲージメントを測る体制が整っていない。
従業員エンゲージメントを高める施策として、従業員に向けて企業理念やビジョンの発信を「実施している」とした人は32.6%にとどまった。また、1on1など従業員一人一人と話す機会を「設けている」とした人は37.3%だった。
その他、業務の裁量権について、従業員一人一人に広く「持たせている」という回答は43.4%と他の項目よりは高い傾向が見られた一方で、過半数の企業において取り組めていない実態が分かった。
調査は2023年12月11日〜2024年2月8日に実施。全国の中小企業経営者を対象とした。有効回答数は973。
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