「コロナ特需」が終わっても、なぜマクドナルドの好調は続くのか カギは業界に先駆けたDX(3/3 ページ)
ロードサイド、テークアウトという点でコロナ禍でも好調を維持したマクドナルド。コロナの影響が収まった現在も、その好調は続いているようだ。背景には何があるのか。
“下位互換”で低価格需要に対応
「100円マック」を実施していたデフレ時代とは違い、現在のマクドナルドは安売り戦略を止めている。2014年から指揮を執ったサラ・カサノバ氏のもと、値上げで得た原資を基に品質・サービスの改善を進めた。その結果、以前よりセットメニューは高くなり、かつてのようなお得感はなくなった。通常のバーガーセットは700〜800円台である。
しかし、コストパフォーマンスに長けた商品が全くなくなったわけではない。例えば「ちょいマック」はその一つだ。「マックチキン」や「エグチ(エッグチーズバーガー)」などのバーガー類などから構成されるメニュージャンルで、一般のメニューより低価格帯となっている。
マックチキンは「チキンフィレオ」と同様にチキンパティを挟んだバーガーだが、重量は138グラム。183グラムのチキンフィレオより軽く、大きさも一回り小さい。カロリーもおよそ100キロカロリー少ない。マックチキンにポテト・ドリンクのMサイズが付いたバリューセットは500円〜であり、680円〜という設定のチキンフィレオセットより200円程度安い設定だ。“下位互換”の商品を生み出すことで、500円台の低価格需要に応えている。
ちなみに、ちょいマックは以前に提供していた「おてごろマック」に代わり、2020年に誕生したもの。マックチキンも以前の「チキンクリスプ」に代わる形で、1月から販売している。外食各社が値上げを行う昨今、500円台で食事をできる場所は少なく、ちょいマックは他業態からの客寄せにも貢献していると考えられる。
朝マックや夜マックを構成することで、マクドナルドは以前より昼以外の需要を開拓してきた。昼に客が集中するモスバーガーやケンタッキーといった業界の競合とは対照的である。そして近年ではマックカフェで夕方時間帯やカフェ需要を開拓しようとしている。さらに安いセットメニューにより、他業態の飲食店よりもお得感のある商品構成に成功している。このように時間帯や業種の垣根を超えた施策に取り組んでいることが、同社の戦略を見るとよく分かる。
一方で、メニュー数を増やせばオペレーション面での負担になり得る。しかし、マクドナルドはモバイルオーダーを導入することで混雑を解消し、レジ要員の負担軽減にも取り組んでいる。カウンターの外から見ても分かるが、クルーの作業も洗練されている。商品構成で全時間帯需要の底上げに成功しているマクドナルドだが、ソフト面があってこその施策であり、競合は容易に真似できない。業界では売上高・店舗数ともにダントツのマクドナルド、その牙城は今後も崩れそうにない。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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