輸送のムダを徹底除去 物流コストを下げる4つの手段とは?:仙石惠一の物流改革論(1/2 ページ)
「物流コスト」の中でも、特に改善余地のある「輸送コスト」。4つの視点からコストダウンの道を探る。
連載:仙石惠一の物流改革論
物流業界における「2024年問題」が顕在化している。この問題を克服するためには物流業の生産性向上以外の道はない。ロジスティクス・コンサルタントの仙石惠一が、運送業はもちろん、間接的に物流に携わる読者に向けて基本からノウハウを解説する。
前回の記事では、物流業務の全般にかかる「物流コスト」の中でも、特に改善余地のある「輸送コスト」に焦点を当て、その構造を理解するとともに、今すぐできる輸送管理の見直し方を紹介した。今回も引き続き「輸送」に着目し、コストダウンがいかに可能か探っていきたい。
輸送の“複線化”のすすめ
輸送というと、一般的にトラックをイメージしがちである。しかし、輸送モード(輸送手段)には、鉄道や船舶、航空機などもある。このモードを組み合わせて輸送を行うことでコスト的にも能力的にも輸送を適正化できる。
モード選択の主要基準はリードタイムとコストだろう。輸送距離が長くリードタイムが許せば、鉄道や船舶を積極的に活用したい。特にトラックドライバーが不足する昨今では、この2つのモードの活用は意義深いものがある。交渉次第で現在のトラック輸送よりもコストが下がることも十分考えられる。
日本は島国であり、かつての北前船に代表される海運が発達している。一定の距離が離れた場所への輸送は船舶を活用することにしてみてはどうか。基本を船舶輸送とし、バックアップを鉄道かトラックにする。このように輸送を複線化することによって、災害時などのリスク発生時にもサプライチェーン断絶防止に寄与できる。リスクマネジメントの一環として輸送モードの複線化をお勧めしたい。
トラックの大型化と混載輸送でコストダウン
トラックのサイズアップは輸送コスト削減のための必須アイテムである。4トン車を10トン車へ、10トン車を19トン車へと変更することによって、一回で輸送できるボリュームを増やせる。今まで部署別に配車していたものを混載することと、トラックの大型化を併せて実施することで、輸送コスト削減の機会は広がる。
まず、工場のどの部署がどこ向けにどのような輸送を行っているのかを調べてみよう。意外とムダな輸送を行っているのではないだろうか。前回書いたように、工場内でトラック配車を一元管理する担当者を決め、その担当が全ての荷物を把握の上、配車を行うようにする。このような改善を実施することで、大きなコストダウンの金鉱を掘り当てることになるかもしれない。
輸送効率化の決め手は「荷量を集めて混載すること」である。その手段として、他社との混載や重量物と容積物との混載、調達品の引き取り化などがある。これらは少々ハードルが高いかもしれないが、ぜひチャレンジしてほしいアイテムである。この中でも比較的取り組みやすいアイテムが「重量物」と「容積物」の混載である(図1)。
重量物とは比重が大きいため、容積の割に重い荷物を指す。鉄のかたまりや水のような製品がそれに該当する。容積物とは、重量の割に嵩(かさ)が張る荷物を指す。ポテトチップスのような菓子類の製品がそれに該当する。例えば、重量物だけを運ぶ場合には荷台に大きなスペースが空くことになるので、そこに容積物を積むことで、トラックの持つ能力を目いっぱい活用することができる。
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