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給料が上がらなくても「社員旅行」を復活すべき、その意外な経済効果スピン経済の歩き方(5/6 ページ)

社員旅行は減りつつある昭和の企業文化の一つだが、日本経済全体を考えた場合、積極的に活用をすべきではないだろうか。その理由は……。

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なぜ企業が負担をするのか

 ……という話をすると、「地方経済を支えようという目的は分かったが、それをなんで企業がわざわざ自分たちの負担でやらないといけねーんだよ」というおしかりが飛んできそうだ。なぜ筆者がこんなことを言っているのかというと、残念ながら今、「日本人の観光客」を増やす術はそれしかないからだ。

 先ほど申し上げたように日本の労働者は賃金が低い。そして、おそらくこれからもなかなか上がらない。「賃金と物価の好循環」を掲げた岸田政権下で、実質賃金マイナスが26カ月連続で過去最長を記録した。先ほども申し上げたように、労働分配率も過去最低だ。


26カ月連続でマイナスだった実質賃金(画像はイメージ、出典:ゲッティイメージズ)

 これは岸田首相が「無能」だなんだという以前に、日本の構造的な問題だ。世界のほとんどの国は最低賃金が「全国一律」だ。しかも、国や自治体が、人々が最低限の暮らしができるように物価上昇にともなって、最低賃金をしっかりと引き上げていく。もちろん、経営者も文句を言うが、全国一律で上がるわけなので、全国一律に価格転嫁をすればいいだけだ。だから、世界では日本円で1500円とか2500円の最低賃金が当たり前になっている。

 しかし、残念ながら日本ではこれができない。全国一律ではないので価格転嫁しにくいこともあるが、やはり大きいのは「どんなに成長しない企業であっても倒産させてはならぬ」という不文律だ。

 日本企業の99.7%を占めるのが中小企業だというのはよく知られているが、実はその大半は何年経過しても企業規模や従業員数が変わっていない。いわば「現状維持型企業」だ。だから、海外のようにドラスティックに最低賃金を引き上げると、困る人がたくさんいる。

 そして、そういう人たちが、自民党の選挙を支えている。だから日本の賃上げは基本的に「春闘の賃上げが中小企業にも波及」という世界的にも珍しいストーリーに基づいて進められている。

 当たり前の話だが、日本企業の0.3%しかない大企業がいくら過去最高の賃上げをしたところで、全国の99.7%の中小企業にはほぼ関係がない。ましてや日本経済を支えているのはサービス業だ。この分野は製造業と違って、大企業の下請けなどほとんどない。

 当然、よく言われる「トリクルダウン」(富が富裕層から低所得層に徐々にしたたり落ちる理論)の影響などほとんどない。結局、物価上昇に追い付くわけもなく、中小企業で働いている日本人の6割はどんどん貧しくなるというワケだ。

 こういう八方ふさがりの現実がある中で、「それでもどうにか地方経済を支えなくてはいけない」という無理ゲーを続けなくていけないのが、今の日本だ。

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