給料が上がらなくても「社員旅行」を復活すべき、その意外な経済効果:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
社員旅行は減りつつある昭和の企業文化の一つだが、日本経済全体を考えた場合、積極的に活用をすべきではないだろうか。その理由は……。
「外国人観光客依存」問題も
そして、もう一つが「外国人観光客依存」という問題だ。コロナ禍で日本から外国人観光客が消えて多くの観光業が打撃を受けたように、外国人観光客はパンデミック、自然災害、国家間の対立・紛争などでガクンと減るものなのだ。もちろん、時間が経過すればまた戻ってきてくれるものだが、観光業者の多くは中小企業なので、その間をしのぐだけの体力がなく廃業・倒産してしまう可能性がある。
このような「観光立国の副作用」を緩和する一つの対策が、「社員旅行」ではないかと思っている。
まず、オーバーツーリズム問題の根幹は「外国人観光客を分散できていない」ことだ。なぜ分散できていないのかというと、都市部や有名観光地以外の観光地の魅力が伝わっていない。多言語対応はもちろん、観光資源の整備もできていない。なぜやらないのかというと、「ニワトリが先か、卵が先か」という話だが、観光客があまり来ないのでカネがなく、魅力的な観光地にするための「投資」ができないのである。
だから、そういう場所に企業は積極的に行ってカネを落としてもらう。
もちろん、宿でただ酒を飲んで宴会をするのではなく、例えばその企業の事業分野やノウハウを生かして、訪れた地域をどうすれば有名観光地として「アピール」できるのかを社員みんなで考えてもいいし、自治体などと協力して実際に社会貢献のプロジェクトにしてもいい。「みんな仲良くなってよかったね」という社員旅行よりもよほど建設的ではないか。
さらに、「外国人観光客依存」にも有効だ。もしまた世界的なパンデミックや大規模な自然災害が起きたとき、外国人観光客は一斉に消えるので、観光業は大打撃だ。それは国内GDPの約7割をサービス業が占める日本経済も、危機に追い込まれるということでもある。
そこで社員旅行の活用だ。経済的に苦しい地域へ企業が積極的に旅行をしてカネを落とすことで、外国人観光客が戻ってくるまで、地域をなんとか持ちこたえさせるのだ。
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