閑散としていた場所が人気観光地に! パソナ「淡路島移転」と同時に進む、重大プロジェクトの中身:長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)
パソナグループが推進する、淡路島への本社機能一部移転。当初の目標としていた1200人を達成した。同社はこれ以外でも、淡路島でさまざまな取り組みを進めている。
目を輝かせる若者
筆者は、Awaji Chef's Scuolaの授業が開かれていたので、様子をのぞいてみた。
その日の講義は「発酵」をテーマにしたもので、発酵・醸造料理の第一人者である前出の伏木シェフが座学・実習を行っていた。受講生は10人ほどいた。
講義では、微生物が食材や心身に及ぼす働きを教える。実習では、発酵調味料の伝統的製法と、大量生産の製品のうま味の差を、実際の製品を受講生たちが味見をしながら検証する、といった内容だった。
受講生の1人に話を聞いてみた。小間陽斗氏は大阪の出身で、大阪市内の辻学園調理・製菓専門学校を卒業。リゾート関連の会社を探していたところ、パソナグループに入社した。普段は、パソナグループが淡路島で経営するフレンチの「ラ・ローズ」に勤務しつつ、Awaji Chef's Scuolaで学んでいる。
淡路島では農業体験ができることもあり、「自分で野菜を育ててみて、食材がどこから来ているのか、料理をつくるストーリーが学べるのが楽しい」と、目を輝かせる。山海の食材の宝庫と言われる淡路島で働くことで、生産者とのつながりができることに大きな価値を見出していた。専門学校では食材の背景までは深く教わらない。顧客と生産者の双方に向き合って、料理を振る舞える環境ができていると実感している。
日本の食産業の未来を担う一流のシェフが、淡路島から生み出される日が来る予感が漂う。
以上、パソナグループの淡路島における事業は、ワーケーションと6次産業化を軸に、さらなる進化を遂げている。閑散としていた西海岸は、人気の観光地として蘇った。子育て支援のインターナショナルスクール誘致や、シェフを育てる学校の開校により、人が学び育っていく環境を整えつつある。今後の動向を見守っていきたい。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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