ゲーム「刀剣乱舞」10年目、自治体が「どうか終わらないで」と望むワケ(3/3 ページ)
2025年1月にオンラインゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』(以下、刀剣乱舞)は10周年を迎える。女性ファンが多いことで知られるこのゲームが、実は自治体からも「できる限り長く続いてほしい」と願われていることをご存じだろうか。
「やめたくてもやめられない」? 運営側の事情も
運営元であるDMMとニトロプラスは、当初の想定を超えて10年間の長期運営を続けている。これまでに行われた多くのコラボレーションやイベントは、自治体だけでなく企業やファンとの強固な関係を築いており、簡単にサービスを終了できない状況にある。博報堂らの調査によると、刀剣乱舞の「支出喚起力」は2018年の時点で150億円とされており、その経済的影響力は無視できない。
ユーザー数はPC版リリースから3カ月で登録者数100万人を突破し、1年後にスマホ版がリリースされた。2023年時点でスマホ版だけでも累計ユーザー数が1000万を突破したと発表している。
2.5次元ミュージカルも大人気で、舞台刀剣乱舞は初演からの累計観客動員数が2019年時点で100万人を突破し、そのチケットは即日完売が続くほどの人気だ。
運営にとっても、長期運営に伴うコンテンツの新鮮さの維持や、新規ファン層の開拓など、解決すべき課題も多い。10周年を迎えるにあたって、新キャラクターや新コンテンツの発表が予定されており、こうした打ち手でファン層の維持・拡大を図っている。
刀剣乱舞は、ゲームの枠を超えて地域振興や文化発信に重要な役割を果たしている。そのコンテンツパワーは経済効果やユーザー数といった定量的なデータからも明らかであり、自治体やファンからの継続要望が強いのも頷ける。
筆者自身も、このゲームを通じて刀剣文化への理解を深め、実際に刀剣収集を趣味とするようになった一人である。今後も刀剣乱舞が長く続き、日本の伝統文化と地域活性化に寄与していくことを強く願っている。
金森努(かなもり・つとむ)
有限会社金森マーケティング事務所 マーケティングコンサルタント・講師
金沢工業大学KIT虎ノ門大学院、グロービス経営大学院大学の客員准教授を歴任。
2005年より青山学院大学経済学部非常勤講師。大学でマーケティングを学び、コールセンターに入社。数万件の「本当の顧客の生の声」に触れ、「この人はナゼこんなコトを聞いてくるんだろう」と消費者行動に興味を覚え、深くマーケティングに踏み込む。(日本消費者行動研究学会学術会員)。
コンサルティング会社・広告会社(電通ワンダーマン)を経て、2005年に独立。30年以上、マーケティングの“現場”で活動している「マーケティング職人」。マーケティングコンサルタントとして、B to B・Cを問わず、IT・通信、自動車・電機・食品・家庭用品メーカー、金融会社、生損保、自動車販売、EC等、幅広い業種に対応し、新規事業・新商品開発・販売計画・販売のテコ入れ案・コミュニケーションプランの策定等、幅広くマーケティング業務の支援を行っている。講師としても業種を問わず、年間100コマ以上の企業研修に登壇。コンサルティング経験を元に企業課題に合わせた研修のオリジナルのコンテンツやカリキュラムを提供。研修によってマーケティングを「知っている」だけではなく、「業務に生かせるようになること」にこだわっている。執筆は、「初めてでもマーケティングが楽しく体系的に学べる本」をテーマに10数冊刊行。「3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)等。
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