シヤチハタが「釣り具」に「ペット用品」? “脱ハンコ”商品ぞくぞく、背景に危機感(1/3 ページ)
シヤチハタが一見「ハンコ」から離れた商品を出し続ける背景を探る。
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。文句なしのご長寿企業だが、近年の同社を取り巻く環境は厳しさを増している。例えば、働き方改革によってこれまでの業務フローを見直す動きが起こり、コロナ禍では「脱ハンコ」の動きも進んだ。
100周年を前に、同社は昨今のハンコに対する逆風や、今後の成長についてどのような展望を描いているのか、舟橋正剛社長にインタビューした内容を、前後編に分けてお届けする。前編として今回は、シヤチハタが一見「ハンコ」から離れた商品を出し続ける背景を探る。
「シヤチハタ」、正しくは「Xスタンパー」
シヤチハタのルーツは1925年に創業した舟橋商会にある。空気中の水分を取り込むことで乾きにくいスタンプ台「万年スタンプ台」を開発・発売し、ヒットを収めた。その後、高度経済成長期の真っただ中である1965年には「Xスタンパー」を発売。今では社名の「シヤチハタ」をニックネームとして広く世の中に普及している商品だ。
従来は押印する際、ゴム印を朱肉のあるスタンプ台に一度押し付ける必要があったが、Xスタンパーではスタンプ台とゴム印を一体化。フタを外して押印するだけという使い勝手がヒットを呼んだ。他にもハンコとペンを一体化した「ネームペン」など、数々のヒット商品を世に出しながら迎える100周年だが、舟橋社長は「文具業界では、そこまで珍しいことではないんです」と謙虚だ。
確かに、文房具業界を見渡せば1897年に創業したゼブラ、1905年のコクヨ、1921年創業のサクラクレパスなど“先輩”は多い。とはいえ100周年といえば、名だたるご長寿企業の仲間入り。もっと喜んでも良さそうなものだが、この謙虚さに舟橋社長の「らしさ」とシヤチハタの強さが潜んでいる。
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