シヤチハタが「釣り具」に「ペット用品」? “脱ハンコ”商品ぞくぞく、背景に危機感(2/3 ページ)
シヤチハタが一見「ハンコ」から離れた商品を出し続ける背景を探る。
入社当時から先行きに危機感 デザインコンペからはさまざまな異色商品が誕生
舟橋社長は1997年にシヤチハタへ入社。当時の社長は、実の父親である舟橋紳吉郎氏である。舟橋社長は当時を次のように振り返る。
「家業を理解していたものの、父から『継げ』といわれたこともなく、入社することはもともと考えていませんでした。大学卒業後に米国へ留学してMBAを取った後、就職したのは電通です。家電メーカークライアントの東南アジア担当に始まり、長野五輪の開会式・閉会式の担当などもしていました」
そんな舟橋氏が一転、シヤチハタに入社したのは父からの言葉がきっかけだったという。
「昔から何かをしろと言うことがなかった父なのですが、このときは『もし入社するつもりなら、今から起こることをしっかり見た方が良い』と言ってきたのです。当時は、事務機器メーカーのプラス社が、『アスクル』ブランドで流通も担い始めていたタイミングでした。父がそこまで言うならよっぽどだろうと考えて、入社を決意しました」
入社当時から持っていたのが、ハンコ市場の先行きに対する危機感だ。
「当社は大企業ではありませんが、市場環境としては恵まれており、新商品を出せば取りあえず、店頭に並べてもらえるポジションにはいます。また、営業で訪問したり電話したりしたときに社名を出せば、話も聞いてもらえます。だからこそ、そこにあぐらをかかず常に新たな発想を持ち、今までの正しさから脱却する必要があると考えていました」
こうした考えを反映した取り組みが「シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション」。2024年で17回目を迎えた、商品化を念頭に置いたデザインコンペだ。もともとはプロダクトデザイナーが制作したオブジェを表彰する催しだったが、これを「もっと社業に結び付けたい」という舟橋社長の思いから、1999年に始めた“肝いり”の取り組みだ。
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