シヤチハタが「釣り具」に「ペット用品」? “脱ハンコ”商品ぞくぞく、背景に危機感(3/3 ページ)
シヤチハタが一見「ハンコ」から離れた商品を出し続ける背景を探る。
リップ型ハンコにペットの足型 斬新な商品を続々投入するワケ
コンペからはいくつもの商品が誕生している。例えば、2020年7月に同社オンラインストアでテスト販売を開始した「わたしのいろ」はその一つだ。従来の朱肉といえば基本的に「朱」を中心に単色だが、わたしのいろは複数の色が混ざった朱肉である点が特徴だ。
朱肉を付ける場所によって印影の色味が変わり、これまでのイメージを大きく覆すことから話題を呼んだ。これまでいくつものバリエーションを発売しており、新作が出るたびに購入しているヘビーなファンもいるとか。その中には弁護士もおり「裁判所の公式文書に使っていただいているそうです。朱肉といえど、朱色じゃなくても良い、ハンコへの固定観念を破壊するきっかけになった商品です」と舟橋社長はうれしそうに話す。
コンペ発の商品以外でも、直近はB2C商品への注力が目立つ。例えば、釣り具のルアーを着色するペンや、ペット用品なども扱っている。
その背景にはリーマンショック期に得た気付きがある。社長就任後に起こったリーマンショックで、B2C事業が強い企業はそこまで大きな影響を受けていなかった。そこで舟橋社長は、B2Bメインで色も地味なものが多かった自社商品のラインアップ拡充が必要だと考えていたという。
さらに近年はクラウドファンディングの活用で、テストマーケティング的に商品を打ち出しやすくなったことも好影響をもたらしているという。
クラウドファンディングの活用を始めたのは、2022年6月から。「Makuake」を活用し、同年11月には本物のリップのようなネーム印「LIPIN」の先行予約販売を開始し、掲載からわずか2時間で目標金額を達成、最終的に目標比2351%の1200万円弱を集めた。他にも、ペットの足形作成キット「ぺたっち」や、デザインコンペでグランプリを受賞した「スーパー楕円ハンコ」など、従来のハンコに対するイメージから一線を画す商品を続々と投入し、いずれも目標を大きく上回る金額を集めている。
実はシヤチハタが注力しているのは、こうしたB2C商品だけではない。後編の記事では、舟橋社長が次世代の柱として期待を寄せている領域や、自ら「脱ハンコ」を進めるようなクラウドサービスを提供する狙いについて、解説していく。
著者プロフィール:鬼頭勇大
フリーライター・編集者。熱狂的カープファン。ビジネス系書籍編集、健保組合事務職、ビジネス系ウェブメディア副編集長を経て独立。飲食系から働き方、エンタープライズITまでビジネス全般にわたる幅広い領域の取材経験がある。
Xアカウント→@kitoyudacp
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