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東京メトロ、生成AIで問い合わせ対応 「100%の性能でなくても実用化」を決断できたワケ(2/2 ページ)

東京メトロは今秋、メールやWebサイトを通じた利用者からの問い合わせに、生成AIを用いて回答するシステムを導入する。ハルシネーションを恐れ、対外向けサービスにおける生成AI活用に足踏みする日本企業が多い中、同社はいかにして、顧客対応に生成AIを使うという決断に至ったのか。

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「100%の性能でなくても実用化」を決断できたワケ

 東京メトロが問い合わせ対応に生成AIを活用する上で、特に気を付けたというのが、ハルシネーションへの対応だ。間違った情報を生成して外部に公開してしまうといったリスクを恐れ、生成AI活用に二の足を踏む日本企業は多い。

 同社は、生成AIの特性上、100%の精度を実現することは難しいと認識したうえで、まずは7割以上の精度での実用化を目指した。そのために、どの時点で精度が7割に達したとみなすか、基準を設ける必要があった。

 そこで、利用者からの問い合わせを受けた際に、オペレーターが対応するフローを大きく3つのカテゴリーに分別。それぞれのフローに対して、生成AIの対応が「ここまでのレベルを達成できれば7割に到達した」とみなす評価軸を設け、7割に達するよう検証を続けたという。

 生成AIが生成した回答には、参照元の情報を併せて開示し、回答に誤りが含まれる可能性もあるため「自身で確認してください」というイクスキューズをつけるようにした。企業価値創造部長の青木洋二さんは「生成AIが間違った情報を生成する可能性は当然ある。多少間違っていても、ヒントになる情報がすぐ出てくる方が嬉しい場合もある」と話す。

 導入したAllganizeのシステムには、生成AIによるハルシネーションを減らす手段として、独自のRAG(Retrieval Augmented Generation : 検索拡張生成)システムを実装。フィードバックを与えて正しい情報をAIに学習させることで、永続的に精度を高めていくこともできるという。


Allganize Japanのイベントに登壇した東京地下鉄CX・マーケティング部長の川上幸一さん(左)と企業価値創造部長の青木洋二さん

 東京メトロは、生成AI活用でどのようなゴールを目指しているのか。

 川上さんは「現状、鉄道各社は相互直通運転をしているため、もし利用者が財布などをなくした場合、複数の鉄道会社に問い合わせなければいけないケースもある。こうした不便をなくすため、鉄道事業者で何か共通の基盤をつくり、利便性を高めるという環境が将来のあるべき姿かなと思う」と話す。

 青木さんは、「チャットボットの機能がどんどん向上していけば、鉄道各社が1社1社、コールセンターを持たなくていい時代が来るんじゃないか」と話した。

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