なぜ日本のマンガは、次々に「メガヒット」するのか:『漫画ビジネス』(1/4 ページ)
日本にはたくさんの漫画家がいて、たくさんの作品が生み出されています。しかも「ヒット作品」も多いわけですが、なぜこのような環境を生み出せているのでしょうか。
この記事は『漫画ビジネス』(著・菊池健/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
「裾野広ければ頂(いただき)高し」
実は、この言葉は、名作『あしたのジョー』を世に送り、現在は日本漫画家協会会長のちばてつやさんが、ことあるごとに使っていた言葉なのです。首相や政府へのロビー活動の際にも使っていたのだとか。漫画家がたくさんいて、あらゆる種類の作品が生み出される環境が発展するほど、面白い作品ができて業界が発展するという意味です。これは、当たり前のことのように聞こえますが、日本のマンガが発展してきた真理なのだと私は考えます。
2024年現在、日本に何人のプロ漫画家がいて、年間何作品が生まれているか、正確な数字は算出できないのですが、参考となる情報として、2010年頃、書店で漫画単行本を発刊する漫画家は約6000人、単行本のアイテム数は1万2000冊強あったようです。
プロとして生計を立てている人だけでなく、漫画家志望者の人数も加えると、その裾野はさらに広いことが分かります。例えば、大学で漫画を教えているところが28校、専門学校が68校を超えており、合わせて推計で5000人超の漫画家志望の学生がいます。
また、日本最大規模の同人誌即売会であるコミックマーケットが、コロナ禍前で最大規模を誇っていた頃には、1回の開催での参加サークル数が3.5万、申し込みベースだと5.1万という巨大な開催だったこともありました。
しかも、漫画家や作品の数は、この数字が発表された2010年以降、さらに拡大の一途をたどっています。要因としては、主に3つが考えられます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』――最も高い家に住んでいるのは? 査定してみた
国民的アニメの主人公は、どんな家に住んでいるのでしょうか? 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』の自宅を査定したところ……。
「日本のアニメ」は家電や邦画と同じ道を歩んでしまうのか
技術や品質が「下」だとみくびっていた相手に、いつの間にか追い抜かれてしまう。そんな悪夢がやって来るのだろうか。白物家電や邦画が追い抜かれたように、「日本のアニメ産業」も負ける日がやって来て……。
『セクシー田中さん』の悲劇で加速する 日本マンガ実写化ビジネスの海外流出
テレビドラマ化した漫画原作者が亡くなるという悲劇が起きてしまった。同じことを繰り返さないために、日本のコンテンツビジネスで求められることとは――。
日本のアニメは海外で大人気なのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が米国でもヒットしている。このほかにも日本のアニメ・マンガは海外市場で勝負できているのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか。その背景に、構造的な問題があって……。
