なぜ日本のマンガは、次々に「メガヒット」するのか:『漫画ビジネス』(3/4 ページ)
日本にはたくさんの漫画家がいて、たくさんの作品が生み出されています。しかも「ヒット作品」も多いわけですが、なぜこのような環境を生み出せているのでしょうか。
週刊漫画誌という発明
では、なぜ日本でここまでたくさんのマンガを生み出すことができたのか? それは、漫画雑誌、とりわけ週刊漫画雑誌という存在が大きく寄与しています。
現在の漫画雑誌は、今から60年以上前の1959年に小学館の週刊少年サンデー、講談社の週刊少年マガジンが、同時に創刊したところから形づくられました。のちに集英社の週刊少年ジャンプ、秋田書店の週刊少年チャンピオンなども創刊し、それがマンガ発展の基礎となる、多数かつ多様な作品を産む土壌となり、ヒット作品を産み出す基盤になっています。
これより前、貸本や漫画少年などその原型になるものはありましたが、今回は今のヒット漫画にフォーカスするため、あえて週刊漫画誌あたりから話をスタートします。
週刊漫画雑誌というのは、世界に類のないユニークなものでした。
紙のマンガの時代、先行していた米国のマンガであるアメコミの世界でも日本の「連載」の概念に近いかたちで、1話1話を20〜32ページの冊子で販売する「リーフ」という形態をとっていました。また、週刊ペースに近い形態で発刊することもありますが、その場合は奇数話と偶数話で制作チームが違うなどといった、並列制作が可能な制作スタジオ形式を取るなど、1作に1漫画家と1編集者という日本のスタイルとは少し違うかたちとなっています。
フランスのマンガ「バンドデシネ」にいたっては、芸術性を評価されるお国柄があるからか、1作家が1年間かけて単行本(日本で言うと新書1冊というようなページのボリュームのもの)1冊を作って発表するというようなかたちが多いようです(ヒット作家さんのインタビューによると、ネームや下書きを描かないなど、日本と違う所も多いようです)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』――最も高い家に住んでいるのは? 査定してみた
国民的アニメの主人公は、どんな家に住んでいるのでしょうか? 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』の自宅を査定したところ……。
「日本のアニメ」は家電や邦画と同じ道を歩んでしまうのか
技術や品質が「下」だとみくびっていた相手に、いつの間にか追い抜かれてしまう。そんな悪夢がやって来るのだろうか。白物家電や邦画が追い抜かれたように、「日本のアニメ産業」も負ける日がやって来て……。
『セクシー田中さん』の悲劇で加速する 日本マンガ実写化ビジネスの海外流出
テレビドラマ化した漫画原作者が亡くなるという悲劇が起きてしまった。同じことを繰り返さないために、日本のコンテンツビジネスで求められることとは――。
日本のアニメは海外で大人気なのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が米国でもヒットしている。このほかにも日本のアニメ・マンガは海外市場で勝負できているのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか。その背景に、構造的な問題があって……。
