コストコとイケアはなぜ時給が高いのか? 日本企業の「人手不足」はただの言い訳に過ぎない(2/3 ページ)
人手不足といわれる中でも人材を確保できているのが、コストコやイケアだ。これらの企業は一般企業と比較して時給が高いのが大きな特徴だが、なぜそれを維持できるのか。
日系チェーンは都内と地方で格差が目立つ
こうした高い時給は、働き手にとってメリットが大きい。一方で、最低賃金の低い地方では、周辺の採用に影響を与えており、これまで1000円前後の時給で採用してきた企業が採用難になる例もあるという。特に個人経営の飲食店が影響を被っているようだ。
厚生労働省が公表している最低賃金(2024年度)は、東京で1163円。その他を見ると、宮城・群馬・沖縄の3県はそれぞれ973円・985円・952円である。大手企業は初期の時給を最低賃金プラスアルファ程度で設定しているところが多く、都内のイオンは1200円台が多い。しかし、地方となると最低賃金すれすれで募集をかけるところも多い。例えば、同じイオングループでも、沖縄では900円台後半の時給で募集しているケースも見られる。
同様に、牛丼大手のすき家も都内では1200〜1300円程度で募集する一方、沖縄は1000円未満のスタートで募集している店舗もある。こうして比較すると、平均して1300円や1500円の時給を出す外資系チェーンがかなり特徴的であると分かる。都内の差はそこまで大きくなくとも、外資の時給は全国一律であるため、地方ほど差が顕著になるのだ。
なぜ、わざわざ高い時給を払うのか
コストコが高時給を提示する理由は明確だ。離職率を下げ、長く働いてもらうためである。高いところでは1年の離職率が5割にも及ぶ小売業において、働き手に長期的キャリアを築いてもらうには、何より時給を高くするのが有効なのは間違いない。離職率の高い職場では従業員のスキルが向上しにくく、新人を一から教育するにも手間がかかる。1000時間ごとの自動昇給制度を採っていることからも、コストコが高い時給を払う狙いの一つに、人材の定着があることがうかがえる。
その他、可能な限り優秀な人材を確保したい狙いもあるだろう。時給が完全に個人のスキルを表すわけではないが、ある程度の指標となることは否定できない。当たり前のことだが、高時給で設定すればより多くの応募を受けられ、高スキルの人材を確保できる確率が高まる。筆者の主観だが、コストコの店舗を訪問すると、大きな塊から手際よく肉を切り分けるスタッフや、積極的に商品PRをする試食コーナーのスタッフ、素早く調理するフードコードのスタッフなど、働いている人材は比較的スキルが高いと感じた。
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