「物流業務の出来栄え」数値で評価できますか? 正しくKPIを立てる方法:仙石惠一の物流改革論(1/2 ページ)
物流会社の多くで業務の出来栄えを評価する「管理指標」が存在していない。工場収益につなげるためには、本気で工場物流のムダを発見してつぶし、物流の出来栄えをきっちりと認識し評価できるようにすることが必要だ。
連載:仙石惠一の物流改革論
物流業界における「2024年問題」が顕在化している。この問題を克服するためには物流業の生産性向上以外の道はない。ロジスティクス・コンサルタントの仙石惠一が、運送業はもちろん、間接的に物流に携わる読者に向けて基本からノウハウを解説する。
「物流業務の出来栄えを評価できますか?」――。このように質問されたら、物流業務に携わる皆さんは何と答えるだろうか。
物流作業の出来栄えをいつでも認識できることは重要だ。
製造工程であれば、日々の出来高の管理や労働生産性など、いくつもの指標で仕事の評価をしていることだろう。しかし、物流となると多くの会社で管理が十分に行われていない。管理指標がほとんど存在していないと言っても大げさではない。
物流を効率化したいと言っている割には、管理が不十分で評価ができない状況にある会社が多いのだ。「何だ、ウチだけじゃないのか」と安心しないでいただきたい。工場収益につなげるためには、本気で工場物流のムダを発見してつぶし、物流の出来栄えをきっちりと認識し評価できるようにすることが必要だ。どのように評価指標を整備していけばいいのか、順を追って見ていこう。
「物流KPI」で効率を見える化しよう
物流を評価するためにKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を導入しよう。製造工程と同様に、物流作業についても、数字で評価できるようにしたい。
工場全体の物流を評価するために「台当たり物流コスト」という指標を考えてみてはいかがだろうか。これはその工場で生産される製品1台にかかる物流コストのことで、次の式で算出できる。
台当たり物流コスト=総物流コスト÷生産台数
総物流コストには、工場内でかかる物流工数(労務費)や物流会社に支払うコスト(運賃や倉庫費)、梱包資材や容器購入にかかるコストなど、全ての物流コストが含まれる。生産台数はその工場が通常指標として把握しているデータを使用すればよいだろう。
この「台当たり物流コスト」は、全ての物流要素が含まれた結果系の総合値といえる。これを逐次下げていくことが物流部門の使命ということになる。ちなみにこのデータを製品1台当たりの売上高で除することで、以前紹介した「売上高物流コスト比率」になる。
(関連記事:宝の山「輸送費」にメスを 物流コスト改善の一手とは?)
「台当たり物流コスト」は結果系の指標であるため、その改善のためには別の要因系のKPIが必要になる。例えば、運搬効率を評価するKPIとして「1人1時間当たり運搬量」が挙げられる。似たような指標として「1人1時間当たり梱包量」「1人1時間当たりピッキング行数」などがある。これらの指標を日々把握していくことで生産性が向上しているかどうかを判断することができる。
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