「時短勤務の管理職」どんな工夫で成果を出している? 3社の事例(1/2 ページ)
子育てと仕事の両立にはまだまだ課題が多く、「制度はあるけどうまく活用しきれていない」と悩む企業も少なくない。そんな中、時短勤務社員がマネジャーとして活躍し、成果を上げている企業がある。取り組みと成功の秘訣を探った。
近年の働き方改革の流れを受けて、多くの企業が「多様な働き方」を模索している。特に話題に上るのが、子育て中の社員のサポートだろう。しかし、子育てと仕事の両立にはまだまだ課題が多く、「制度はあるけどうまく活用しきれていない」と悩む企業も少なくない。
そんな中、時短勤務社員がマネジャーとして活躍し、成果を上げている企業がある。Works Human Intelligence、日本事務器、エプソン販売に話を聞き、その取り組みと成功の秘訣を探った。
時短社員の働きやすさをサポートする、多様な労務制度
「現在小学1年生の子どもがいるため、勤務時間は午前8時から午後3時までの(休憩を除いた)6時間です。子どもが生まれて職場復帰してからは、幼稚園入園や小学校入学など、子どもの成長や環境の変化に合わせて勤務時間や働き方を柔軟に変えています」
そう話すのは、HRテックの開発・運用を行うWorks Human Intelligence(以下、WHI)で約20人のチームをマネジメントしている東城有希子氏だ。2009年に新卒で同社に入社。2017年から2年間の育休を取得し、復帰後には時短勤務をスタート。2019年にマネジャーに抜擢(てき)されたあとも、時短勤務を続けている。
柔軟な働き方を可能にするため、同社は人事制度の充実に注力しているという。人事部門の笠間久智氏は、「時短社員に限らず、社員一人一人が生産性を高め、パフォーマンスを最大化できるような働き方を重視しています」と説明する。
ベビーシッター補助、看護休暇といった育児中の社員をサポートする支援だけでなく、フルフレックス制度やテレワーク制度など、さまざまなバックグラウンドを持つ社員の働きやすさを支援する制度を用意している。テレワーク推進のため、社員一人につき年間10万円の手当を支給しているのも特徴だ。同社の在宅勤務率は年平均6割を超えるという。
類似の取り組みを行い、社員の働きやすさを実現している企業は他にもある。システム開発を行う日本事務器では、テレワークやフレックス制度はもちろん、早出・遅出勤務、休憩時間を柔軟に利用できる制度を設け、時短勤務のマネジャーを含めた全ての社員が効率的に業務を遂行できる環境を整えている。オンライン会議や社内SNSの活用、クラウド化された業務システム、最新IT機器の貸与など、テレワーク下でも円滑にコミュニケーションが取れるよう社内の環境整備にも積極的だ。
OA機器の販売を行うエプソン販売も同様に、社員のライフステージの変化に合わせた支援を行っている。「効率経営」と「健康経営」の実現、そして「社員がいきいき働ける会社」を目指して、働き方改革を行っている同社。在宅勤務制度や時間単位の年休取得制度、コアタイムレスフレックス制度の他、「すこやか休暇制度」という有効期限がすぎた有給休暇をつみたてて、自身の傷病時や育児、介護などに利用できる制度を設けているのも特徴だ。
働く時間ではなく、個人の能力にフォーカスする
働きやすさを実現する制度を利用して、出産後も働き続ける選択をする人は増えてきている。しかし、“キャリアアップ”を諦める人は現在も少なくない。WHIの東城氏も、以前はそうだったという。
「出産する前は『私もいつかマネジャーになりたい』と思っていましたが、実際に子どもができたら、環境の変化についていくのがやっとでした。2019年に職場復帰はしましたが、どうしても仕事時間に制限ができてしまう子育て中に、マネジャーになるのは難しいだろうと諦めていたんです」
「それでも、限られた時間で成果を出そうと奮闘していたら、復帰から2年後の2021年に登用の話をいただいて。勤務時間ではなく、個人の能力を評価してくれたことがうれしかったですね」
これには、同社の社員の多様性を尊重する方針が現れているのだろう。男性の育休取得率は77%と高水準に上る他、執行役員や部長クラスも積極的に育休などの各種休暇制度を取得しており、「休むこと」と「評価」を直結させない文化が根付くよう取り組んでいる。
この文化の浸透によるメリットを感じているのは、子育て中の時短社員だけではない。社員全体を対象にした年に一度の満足度調査の「働きやすい職場かどうか」という項目では、勤務時間に関係なく高い水準が維持しているという。日本事務器やエプソン販売でも同様に、「誰でも働きやすい文化づくり」を意識し、制度を最大限活用する土壌を築いている。
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