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「弱者の戦略」がDX成功の鍵に 生成AIに「できない理由」を投げてみると……?(3/3 ページ)

今回は自治体がデジタル変革を進めるための「資源の制約」「弱者の戦略」という考え方について見ていきたい。

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生成AIに「できない理由」を投げ続けてみる

 前回はChatGPTに対して、KGI、KPIのアイデアを出してもらいました。これらのアイデアを参考に、実際に何に取り組むのか(WHAT)を生成AIといっしょに考えてみましょう。

 ChatGPTなどチャット形式の生成AIのメリットの一つは、対話を通じて考えの整理ができることです。例えば、ChatGPTから示されたKGI、KPIが次のようなものだったとしましょう。

AI:

職員のためのビジョン

(中略)

3.デジタルスキルの向上と育成

KGI

  • 職員の90%以上が必要なデジタルスキルを習得。
  • 研修プログラムを受講した職員の80%が「業務に役立った」と評価。
  • デジタル技術を活用した新しい業務改善提案が年間10件以上提出されている。

KPI

  • デジタルスキル研修の受講率。
  • 研修後のスキル習得テストの合格率。
  • 新たな業務改善提案の件数。

 KPIは取り組み指標なので、どのような活動を行うのかを決めていく必要があります。きちんとプロンプトを設計して、まとめて問い合わせてもよいのですが、今回はチャットでの対話で進めてみましょう。

私:

 職員のためのビジョンの3番目「デジタルスキルの向上と育成」の「デジタルスキル研修の受講率」について、もう少し考えを整理させてください。

 いったん、このKPIを採用するとして、これを測定するためには、どのような活動が必要だと考えられますか?

AI:

 次の活動が考えられます。

 研修プログラムの設計・提供

 全職員がデジタルスキルを習得できる研修プログラムを開発し、提供します。内容は職務レベルや分野に応じて異なるものを用意します。(後略)

私:

 「内容は職務レベルや分野に応じて異なるものを用意します。」とありますが、現実的にはそれだけの人的、金銭的な余裕はありません。着手しやすい方法についてアイデアはありますか?

AI:

 限られた人的・金銭的資源の中で実現可能な方法を考慮すると、以下のアプローチが着手しやすいものとして有効です。

1.統一された基礎デジタルスキル研修の導入

 職務レベルや分野によって研修を分けるのではなく、全職員向けに共通の基礎的なデジタルスキル研修を設けることで、コストと労力を削減できます。この研修では、以下の基本的なスキルを習得させることが目標です。

  • Microsoft Officeの効率的な利用方法
  • セキュリティの基本知識(パスワード管理、フィッシング対策など)
  • AIやRPAなどのツールの基礎知識と操作

2.オンライン学習プラットフォームの活用

 人的リソースを節約するために、外部のオンライン学習プラットフォーム(UdemyやCourseraなど)を活用することが有効です。これらのプラットフォームでは、多様なデジタルスキルに関するコースが用意されており、比較的安価で職員が自分のペースで学習できます。

 既存の教材を利用することで、研修内容を一から構築する必要がなくなり、時間とコストを削減できます。

3.「庁内トレーナー制度の導入

 一部の職員に対して重点的にデジタルスキルの研修を行い、「庁内トレーナー」として他の職員に指導を行ってもらう方法もあります。これにより、全職員に対して一斉に研修を行う必要がなく、職員リソースを効果的に活用できます。

 トレーナーとなる職員は外部研修やオンラインプラットフォームを利用してスキルを習得し、それを自部署で伝達する役割を担います。

4.モジュール型の段階的研修

 研修をすべて一度に実施するのではなく、モジュール型で少しずつ段階的に研修を行うことも検討できます。1回あたりの研修は短時間で完了し、少しずつ学ぶことで職員の負担も軽減されます。

 初回は基本的なIT操作、次回はAI・RPAの活用、さらに次はセキュリティ対策など、段階的に進めます。

私:

 モジュール型の段階的研修ですが、短時間の研修のたびに準備をしたり、研修内容を検討するのはかえって煩雑になってしまいます。

(以下続く)


ChatGPTに向けて「できない理由」を投げ続ける

 筆者が自治体の現場にいると、新しい取り組みに対して後ろ向きな職員から「できない理由」を延々と並べられてガッカリすることもあるのですが、ChatGPTなら同じように「できない理由」を投げ続けても、辛抱強く回答してくれます。

 見方を変えると「できない理由」にも一理あるかもしれず、それが個人の考えなのか、客観的な制約なのかを丁寧に整理していくことで、案外よい解決方法が見えてくるかもしれません。

 次回は「自治体のオープンデータへの取り組みと生成AIの関係」について考えていきましょう。

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