「弱者の戦略」がDX成功の鍵に 生成AIに「できない理由」を投げてみると……?(2/3 ページ)
今回は自治体がデジタル変革を進めるための「資源の制約」「弱者の戦略」という考え方について見ていきたい。
「業務効率化」「生産性向上」を正しく捉える
自治体のデジタル化の目的として「業務効率化」や「生産性向上」を掲げていることがあります。では、この効率化、生産性とは何を指しているのでしょうか。案外このあたりの認識が人により異なるので、話がかみ合わないことがあります。先ほどの価値の連鎖の図を使って見てみましょう。
今回は生産性の定義を「インプットに対するアウトプットの大きさ」とします。言い換えると「いかにイケてる活動をしているか」ということです。資源が限られているため、アウトプット(結果)が大きく、質の高いものならば、大歓迎です。
一方、アウトプット(結果)とアウトカム(成果)との間に境界線があり、世界が異なるということもお話しました。したがって、アウトプット→アウトカムの価値の連鎖は保証されていないのです。これはKGIとKPIの違いという点でも説明できます。
もちろん、アウトプットとアウトカムに強い相関がある業務もありますが、そのような「簡単」な業務は、先人たちがすでにやり尽くしていることもあり、残された業務の多くは「やってみないと分からない」というのが筆者の率直な見解です。
余談ですが、職員の世代によって業務に対する捉え方の違いが見られるのは、このあたりも一つの要因かもしれません。
誤解を恐れずに言えば、取り組めば勝手に成果が付いてくるような業務、あるいは少し難易度が高いが、段取りを立てて着実に取り組めば成果に結びつく業務を多くこなしてきた世代の感覚で、若手の職員に叱咤激励(しったげきれい)しても、そもそもの業務の構造が異なるのですから、響かないのです。
「弱者の戦略」で小さなインパクトを積み重ねる
ここまでを総合して、これからの自治体職員の業務の向き合い方を考えましょう。
図のタイトルが「弱者の戦略」とあります。現在の自治体を取り巻く状況を見ると、さまざまな制約から不本意な活動を強いられている場面もあり、決して恵まれた立場にいるわけではありません。そのような弱者の立場でデジタル変革に挑むとすると、次のようになります。
- 与えられた資源の範囲で
- 生産性を高めるために継続的に工夫し
- アウトカムを客観的に評価し
- 小さなインパクトを繰り返す
制約のある中でも、与えられた資源を使い、生産性を高める努力は必要です。この場合、一生懸命取り組むのは(KPIの観点から)当然として、どちらかというとやり方の工夫の方が求められます。
その上で、アウトプットとアウトカムの関係を常に注視し、アウトカムにつながる取り組みを見つけていきます。期待されたアウトカムにつながらないのならば(KGIに近づかないのならば)、プランB、プランCへの切り替えも視野に入れます。
通常、配分する資源が小さいのならば、最終的に得られるインパクト(変化)も小さいと考えるのが自然でしょう。つまり、いきなり大きなインパクトを狙うのではなく、小さなインパクトを積み重ねていく方が、結果としてビジョンの達成に近づくのではないかというのが筆者の考えです。
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