連載
日産9000人削減の衝撃 「技術自慢の会社」ほど戦略で大コケする理由:スピン経済の歩き方(7/8 ページ)
日産自動車は、なぜここまで経営危機に陥ってしまったのか。特に中国市場が厳しい理由や、問題の本質とは――。
「技術の日産」ゆえの迷走
ビジネス的にはグループの三菱自動車を活用したい。しかし、それでは「技術の日産」の否定につながってしまう。そんなジレンマが外部に漏れてきたかのような、奇妙なスクープ報道があった。
『日産自動車、PHVを自社開発 EV逆風で世界戦略車に』(日本経済新聞 9月22日)
三菱自動車の技術を活用することなく、日産オリジナルPHVを開発して2020年代後半に販売できる準備を整える、という日経独自の特ダネである。
これが事実かどうかは分からないが、一つだけはっきり言えるのは、いまだに日産車内ではPHVを巡るスタンスが定まっていないということだろう。
会社の業績を左右する戦略が、なぜこんなに迷走するのかというと「技術の日産」だからだ。世界中のほとんどの自動車ユーザーからすれば、質の良いEV、HV、PHVに乗れることが何よりも大事だ。その技術を日産がつくろうと、三菱自動車のものを活用しようがどうでもいい。
大切なのは、価格や安全性、使い勝手、装備の充実さ、乗っていて楽しいのか、心が満たされるのかだ。それはまさしく中国人ユーザーたちが、アリアに感じられなかったことである。
「だからこそ技術が大事だろ!」と激怒しているエンジニアも多いだろうが、技術などどうでもいいという話ではなく、技術力はあくまで顧客の幸せを実現する「手段」に過ぎない。技術力を磨くことばかりに執着すると、顧客にそっぽを向かれると言っているのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
船井電機「給料払えません。即時解雇です」 社員が気づけなかった「3つ」の危険信号
ある日突然、会社が倒産――。船井電機の社員に突然起きた「悲劇」から、多くのビジネスパーソンが学ぶべきこととは。
衰退するシャープは「日本そのもの」か “世界の亀山モデル”が失敗パターンにハマった理由
シャープが、テレビ向け大型液晶パネルの生産を2024年9月末で終了すると発表した。同社はまるで「世界の変化に対応できず」衰退していく「日本そのもの」のようだ。なぜかというと……。
なぜ「サマンサタバサ」はここまで追い詰められたのか 「4°C」との共通点
「サマンサタバサ」が崖っぷちに追い込まれている。ボーナスの支給がないほど業績が低迷しているわけだが、なぜここまで追い込まれているのか。「4°C」との共通点があって……。
サイゼリヤの進化か、改悪か? メニュー削減と2000店舗拡大の裏にある戦略
「脱ファミレス戦略」を進めるサイゼリヤが、メニュー数を減らしている。中期目標で「国内2000店舗」を掲げているが、それは本当にサイゼリヤファンが求めていることなのだろうか。

